植物油から水素まで、クボタエンジンジャパンの脱炭素エンジン戦略第7回 国際 建設・測量展(2/2 ページ)

» 2025年08月29日 09時26分 公開
[加藤泰朗BUILT]
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既存互換性を維持する3.8L水素エンジン

 他の参考展示としては、産業用水素エンジン「3.8L-Hydrogen」を紹介した。 国内特自(特殊自動車)排ガス4次規制に対応した既存の「V3800型」をベースに開発し、火花点火式エンジン「WG3800」の技術も転用している。

産業用水素エンジン「3.8L-Hydrogen」 産業用水素エンジン「3.8L-Hydrogen」

 既存モデルと同じサイズと設置面積を維持しているため、多様なアクセサリーの選択が可能で、顧客アプリケーションとの互換性も損なわれない。エンジンの回転力を油圧などに変換して動力とするPTO(パワーテイクオフ)の位置にも変更はなく、従来の使い勝手をそのまま継承している。

「3.8L-Hydrogen」の説明パネル 「3.8L-Hydrogen」の説明パネル

 ブース担当者は「マウント位置や動力の取り出し位置を既存エンジンから踏襲することで、現在使用している車体に大幅な変更を加えることなく、自社製品を低炭素仕様に移行できる」と語り、その実用性に自信を示した。

出力強化とSCR初搭載の産業用ディーゼルエンジン「V3307」

 産業用ディーゼルエンジン「V3307-CR-TI-E5-SCR」は、後処理装置を除き現行機「V3307-CR-TI-E5」と同等のサイズ感ながら、出力帯を大幅に強化したモデルだ。従来のV3307は56キロワット(kW)未満だったが、約65%増となる90kWクラスへと拡大。大排気量エンジンからのダウンサイジングが可能となり、低燃費の実現と機械への搭載の自由度向上を両立した。

 さらに、56kW超の排ガス規制対応として、窒素酸化物(NOx)を浄化するSCRシステムをV3307モデルとして初めて搭載。欧州のノンロード移動機械向け排出ガス規制「EU Stage V」と、米国環境保護庁(EPA)が定めるオフロード用ディーゼルエンジン規制「EPA Tier4 Final」に適合している。

 後処理装置では、前モデルより搭載性を高めた「コンパクトミキサー」も出品。製品担当者は「後処理装置のバリエーション拡大で、用途や顧客アプリケーションごとに最適な構成を選択できる」と語った。

後処理装置「コンパクトミキサー」(左)と産業用ディーゼルエンジン「V3307-CR-TI-E5-SCR」(右) 後処理装置「コンパクトミキサー」(左)と産業用ディーゼルエンジン「V3307-CR-TI-E5-SCR」(右)
「V3307-CR-TI-E5-SCR」の説明パネル 「V3307-CR-TI-E5-SCR」の説明パネル

多燃料と新燃焼方式の小型エンジン

 脱炭素に寄与する小型エンジンも2種類展示した。「WG2503-GL-E3」は、低振動かつ低騒音の産業用エンジンで、ガソリン/LPG/天然ガスに加え、ガソリンとLPGを搭載機種に応じて切り替えられるデュアルフューエルバージョンも用意している。

産業用ディーゼルエンジン「WG2503-GL-E3」 産業用ディーゼルエンジン「WG2503-GL-E3」

 「D1105-K-E4」は、環境性能と燃費を両立させた小型産業用ディーゼルエンジンだ。最適な噴射制御を実現するクボタオリジナル燃焼システム「TVCR」を採用し、始動時や加速時、急負荷時でも黒煙が視認できないレベルまで排出ガスをクリーンにする。さらに従来機と比べて燃費を約5%改善している。

電子制御小型産業用ディーゼルエンジン「D1105-K-E4」 電子制御小型産業用ディーゼルエンジン「D1105-K-E4」

 担当者は「脱炭素化が世界的な目標となっているが、化石燃料を一気に使わないという方向性は現実的には容易ではない。既存技術の改良によってもカーボンニュートラルに貢献できる余地は大きく、今後もその追求を続けていきたい」と展望を語った。

 多様なエンジンを通じ、脱炭素化に向けた現実的なアプローチを提示したクボタエンジンジャパンの姿勢は、来場者の関心を集めるとともに、今後の産業用エンジン開発の方向性を示すものとなった。

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