神奈川県藤沢市は2025年度から、全国の自治体で初めて施工管理クラウド「ANDPAD」の本格利用を開始。現場の遠隔臨場や写真/図面管理をデジタル化することで、職員と事業者双方の働き方改革を推進する。導入の背景や効果、今後の展望を取材した。
神奈川県藤沢市は2025年4月から、全国の自治体で初めて、公共建築工事にクラウド型施工管理サービス「ANDPAD」を本格導入した。現場管理の効率化により市職員と事業者の働き方の改善を推進するとともに、紙ベースの情報管理からの脱却や維持管理への活用なども図る。導入に至った背景、現場での効果、今後の展望を担当者に聞いた。
全国の自治体では、老朽化施設の改修、建て替え需要が増加する一方で、職員の人手不足が課題となっている。藤沢市も例外ではなく、建築工事の発注や施工管理を担う職員は限られる一方で、現場確認、写真整理、図面/書類管理、業者との調整、法定検査対応など多岐にわたる業務負担が重くのしかかっていた。
藤沢市 計画建築部 建設総務課 上級主査 田中朋春氏は「工事部門は他部署と比較して労働時間が長く課題となっていた。特に施工管理業務は、日中は現場に出向き、夕方以降に庁舎に戻ってから書類作成などを行うため、残業が慢性化してしまう」と話す。
さらに行政特有の課題として、定期的な人事異動がある。「大規模工事は5〜6年単位に及ぶこともあり、人事異動で担当者が途中で入れ換わると、膨大な紙ベースの資料を細かく引き継ぐのは難しい。過去の工事の知見を別の工事や維持管理に生かすことも困難だった」(田中氏)。
藤沢市は2022年4月に「藤沢市DX推進計画」「藤沢市スマートシティ基本方針」を策定し、行政サービス全般のデジタル化を進めてきた。そうした状況を受け、建設部門でも、上記の課題解消に向けて、2024年度からデジタル技術の導入検討を開始。まず施工管理ツールの市場調査に乗り出した。
調査に当たっては職員自ら展示会やセミナーに足を運び、複数製品を比較。最終的に2社に絞り、2024年10月からトライアルを実施。トライアルにより一定の成果が得られたことから、ANDPADの施工管理ツールの導入に踏み切った。
田中氏は決め手について「写真整理や書類管理に関してはどちらも優れていたが、遠隔臨場機能があるANDPADに決めた。現場に行く回数を減らせるため、人件費削減に直結するからだ。さらに、将来は施設管理用途へ展開できる可能性があることも判断材料になった」と語る。
また、ANDPAD導入に当たっては市のDX推進室(現:デジタル戦略課)と連携して、セキュリティ確保の観点などから検証を重ねたという。「自治体ごとにセキュリティ要件が異なるため、必ずしも同じように導入できるとは限らないが、一例として参考になれば」と述べた。
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