建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。今回は、八潮市の道路陥没事故や能登半島地震で、ドローン調査の実績があるLiberawareが、社会問題化するインフラ老朽化を解決すべく取り組んでいる建設DXのうち、とりわけ“下水道DX”について実例を交えて紹介します。
少子高齢化による2040年の生産年齢人口約2割減少(2020年比較)、日本全国での災害の激甚化/頻発化、高度経済成長期以降に整備された社会資本の老朽化など、急速な社会変化と課題に直面している日本の建設業。国土交通省は2024年4月に「i-Construcion 2.0 建設現場のオートメーション化」を発表し、建設現場で省人化3割を目標としています。実現のためには建設分野のデジタルトランスフォーメーション(建設DX)は不可避となっています。
千葉県千葉市に本社を構える「Liberaware(リベラウェア)」は、「誰もが安全な社会を作る」をミッションに掲げ、ビジョンでもある「見えないリスクを可視化する」により、人々に安全で平和な社会を目指しています。
「狭い、暗い、危険」かつ「屋内空間の点検/計測」に特化した世界最小級ドローン「IBIS(アイビス)」を開発。DX分野ではドローンやロボット、LiDARなどから収集した空間情報の自動解析ソリューションを提供し、施工管理、インフラ点検/維持管理の支援を進めています。建設DX研究所にも加盟し、業界全体の建設DX推進にも尽力しています。
Liberawareは国交省による「中小企業イノベーション創出推進事業」で、「建設現場における施工管理の省力化・高度化技術の開発に関する共同提案(以下、本研究)」の共同研究を進めています(※共同提案者:KDDIスマートドローン、大林組)。
本研究は、ダム現場を調査対象とし、ドローンの遠隔運航や自律飛行による施工現場管理の省力化/高度化を目的に進められています。具体的には、現場の巡視や計測に必要なデータをドローンで取得し、その画像や自動生成された3次元化データを施工管理システムへ連携させることで省人化/省力化の実現を見据えています。
ダム現場では1日あたり40人が4時間ほど現場管理業務に従事していること分かりました。現場管理業務のうち巡視は、現場と事務所間での移動時間、人が立ち入ることへの危険性、監視カメラでの確認の困難さといった課題があります。発注者側にとっても現場確認業務は大きな負担となっています。
本研究では人による巡視をドローンに置き換え、巡視時間の省力化や不可視場所を確認する危険個所確認の安全確保を目標にしています。また、発注者側の臨場の手間を省くだけでなく、過去データによるトレーサビリティーの確保も可能となります。
従来の進捗管理/出来形確認は、測量機を利用した計測や現場写真、図面、帳票で進捗を確認していました。
本研究では、ドローンが対象物に接近して高解像度で撮影した画像から3Dモデルを作成。その3Dモデルを利用して解析/測定することで、現場進捗を確認ができるようになりました。計測作業の省力化や危険個所のドローン撮影による安全性確保、測定方法標準化による測定品質の向上が図られます。出来形確認でも同様の手法による効果が見込まれます。
ドローンによる施工管理を実現するには、現場を3次元化するための画像撮影に適した飛行高度の算定が都度必要で、工事進捗とともに変化する土量算出などの対象範囲の調整も不可欠です。また、リアルタイムで位置情報を取得するRTKによる標高値と、実際の標高値に誤差があることは自動化のための課題となっています。そのため、本研究では実証結果を検証する中で、計測に必要な情報整理とデータ作成手法の検討も進めています。
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