西松建設が生成AIで技術提案書作成を効率化、人とAIの役割分担が鍵に DX企画部部長が語る導入の舞台裏生成AIが加速する建設業の構造改革(1)(1/3 ページ)

建設業の業務効率化や働き方改革を後押しする技術として注目される生成AI。新連載「生成AIが加速する建設業の構造改革」では事例を通じて導入の実態や効果を探る。第1回は早期から生成AI活用を推進し、社内文書検索システムや技術提案書作成支援システムの開発に取り組んできた西松建設の事例を紹介する。

» 2025年09月30日 10時00分 公開
[畑野壮太BUILT]

 働き方改革や生産性向上が求められる建設業界で、生成AIは単なる効率化ツールにとどまらず、業務プロセスや働き方を大きく変える可能性を秘めている。建設業の構造改革をけん引する生成AIの実装事例を追う連載「生成AIが加速する建設業の構造改革」。第1回は、西松建設の取り組みを紹介する。

 西松建設は建設業界の中でも比較的早期に生成AIに着目し、2023年5月に導入プロジェクトを開始した。建設業特化型の大規模言語モデルを導入するとともに、社内文書を検索/参照できる機能や、技術提案書の作成を支援するシステムを内製で開発。自社に蓄積されたナレッジを活用できる体制を整えている。

 その決断の裏には何があったのか。どのように生成AIを活用し、成果につなげているのか。 西松建設 技術戦略室 DX企画部 部長 増田友徳氏に聞いた。

生成AIが「働きやすさ」実現の中核に

西松建設 技術戦略室 DX企画部 部長 増田友徳氏 編集部撮影

 西松建設が本格的に生成AI導入の検討を開始したのは2023年初頭。ChatGPTの登場によって生成AIが社会的な注目を集める中、日本の大手企業の間でも導入検討の動きが広がりつつあった時期だ。しかし当初は主にセキュリティ面の懸念から、積極活用に踏み切る企業はまだ限られていた。

 増田氏は、2022年の「西松DXビジョン」策定と同時に現職に就任し、社内のDX推進、特に生成AI導入の陣頭指揮をとってきた。

「当時、ChatGPTの積極的な活用方針を示す企業は少なく、多くが『検討中』にとどまっていた。中には利用を全く認めない企業もあるなど、全体的に慎重な姿勢が目立っていた印象だ。当社でも情報漏えいリスクは認識しており、2023年4月にはICTインフラ課が、会社の重要な情報などを書き込まないよう社内に注意喚起していた」

 しかし2023年4月頃から、生成AIの業務活用を表明する企業が相次ぐようになる。増田氏も2023年5月の役員会議で、業務効率化を目的とした生成AI活用を提言。DX戦略室内にプロジェクトチームを発足し、よりセキュアに、かつ本格的に業務で活用するための調査を開始した。増田氏によると「上層部も新しいテクノロジーへ関心が高く、提案はスムーズに受け入れられた」と振り返る。

 こうした判断の背景には、西松建設が掲げる「西松DXビジョン」がある。ビジョンでは「仮想と現実が融合した一人ひとりが活躍できるワークスタイル」を目標に掲げ、その実現に向けたロードマップの中で「仕事をアシストする仕組み」の導入を明記していた。生成AIは、この構想を具現化する技術の1つに位置付けられている。

西松DXビジョン ステートメント/テーマ 出所:西松建設Webサイト
西松DXビジョン「仮想と現実が融合した一人ひとりが活躍できるワークスタイル」ロードマップ 出所:西松建設Webサイト
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