AI×デジタルツインで進化するインフラ点検 枕木劣化を列車カメラで判定など【土木×AI第36回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(36)(1/3 ページ)

デジタルツインとAIを組み合わせることで、現場の維持管理や災害時対応をより効率的にかつ迅速に支援するシステムが開発されています。損傷の影響評価や対策の検討を行うには、損傷の位置や寸法も重要な情報となるため、AIで検出した損傷をデジタルツインと関連付けることが業務の改善につながります。

» 2025年10月09日 10時00分 公開

橋梁点検でデジタル画像とAIを活用した例

 文献1では、撮影された橋の画像を下図上のように組み合わせてパノラマ化し、さらに下図中のように正面から見た画像の形に変換しています※1。このような画像は“オルソ画像”と呼ばれ、図面データと重ね合わせて利用することができます※2。AIで検出された損傷もオルソ画像を元にしているので、下図下のように損傷の位置がわかるように重ね合わせて表示できます。

歩道橋下面の合成画像の例 歩道橋下面の合成画像の例 ※1
上図の赤枠部分のオルソ画像 上図の赤枠部分のオルソ画像 ※1
オルソ画像とAIによる腐食検知結果の重ね合わせ オルソ画像とAIによる腐食検知結果の重ね合わせ ※1

※1 「橋梁点検でのデジタル画像とAIの活用と検証」穴吹まほろ,青木泰一郎,木村真嗣,後藤幹尚,岩波光保/AI・データサイエンス論文集6巻1号p86-95/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

※2 国土地理院「オルソ画像について」

連載バックナンバー:

“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト

本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。

鉄道の木まくらぎ劣化を判定

 鉄道の軌道部材の検査や台帳整備などの維持管理業務は通常、保線技術者が現地に出向いて行っています。維持管理を効率化するために、市販のビデオカメラを先頭車両に設置し、車両から前方を撮影した画像によって、鉄道の木まくらぎの劣化を判定するシステムが研究されています※3

木まくらぎ劣化度判定システム 木まくらぎ劣化度判定システム ※3

※3 「列車前方画像を活用した軌道部材状態評価システムの構築」高原恵男,坪川洋友,加藤爽,長峯望,合田航,前田梨帆/AI・データサイエンス論文集5巻3号p769-777/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

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