ディスカッションで熱を帯びたのは、AIへの向き合い方だ。大和ハウスの宮内氏は、検査画像の合否推定やマスターデータ整備によるAI活用を挙げ、大林組の飯田氏はスケッチからの3Dモデル生成や構造設計の自動化支援といった“社内知の形式知化×AI”の試行を紹介した。
宮内氏は昨今のAIの進化スピードを「ロケット級」と表現し、その速度に乗る“攻め”の姿勢を示した上で、「データは束ねて取り出しやすくし、目的別にAIを活用するための発想が要る」とした。
清水建設の三戸氏は「DX基盤の上にAI基盤がある」と主張し、「生成AIに性急に飛びついても、業務で正しいデータが自然にたまる仕組みがなければ再現性はない。だからこそBIMとCDEを核にプロジェクトをデータ化し、原価などの社内データベースとも連携させてからAIを投入すべきだ」と提言した。
飯田氏は「BIMは“インフォメーション”で、AIに与えるには“データベース”化が欠かせない。活用の標準化と評価軸の言語化、すなわち“会社の中のルール”を見える化することが、AIの実効性を底上げする」と述べた。
3者の論をまとめると、AIを扱うための基盤(構造化データ×CDE×運用標準)を整えつつ、用途が明確なポイントからAIを攻めに使うのが重要となる。
もう1つの焦点は、脱炭素を軸にした設計・生産の再設計だ。飯田氏は、木造の単純置換にとどまらず、ユニット化や設計〜製作〜施工の一気通貫での連携を同時に進めることで、生産性の向上とCO2削減を両立させる取り組みが動き出していると説明。サステナビリティーの観点でムダを削減することが、工場で事前に部材を製作する「IC(Industrialized Construction:建築の工場生産化)」にもつながるというわけだ。
宮内氏は、「DfMA(工業化建築)×IC×CDEの三位一体で“作り方”を変えない限り、サステナビリティーの本質には届かない」と訴える。海外と日本の熱量差を肌で感じた経験から、「会社レベルのデータ/ソリューション戦略が標準化を整える役割を担うべきだ」と提案した。
三戸氏は、全過程(ライフサイクル)でCO2を定量的に評価する「LCA(ライフサイクルアセスメント)」の視点から、「木材利用は再植林とのセットで循環を設計して初めて意味を持つ。将来は、LCAの開示から削減へと政策が進むだろう。その時に備え、今からデータ整備と算定運用を作り込む必要がある」と強調した。
ここでも鍵となるのはデータだ。材料や工法、工程をLCAの物差しで選択できるように、設計の早い段階からデータを回せる仕組みをつくることが欠かせない。サステナビリティーは、プロジェクトの基本設計と同様に扱うべきKPIだという点で3者は合意した。
AIにしろ、サステナビリティーにしろ、効果的に活用して目に見える結果を出すには、リテラシーが求められる。三戸氏は、「海外の現場で現場所長が自らツールを選び、人員30%削減の目標を背負って運用設計する姿に衝撃を受けた」と話す。専門部署任せではなく、現場が意思を持ってツールを選び運用する力が成果を分ける。このことはAIでもCDEの構築でも同じだ。
特にAIは、正しいデータを与えれば、目指す結果が得られる。しかし、日本ではそのようなリテラシーが育っていない。三戸氏は現在の“AIバブル”のような状況に触れ、リテラシーを持っていない人が、役に立つ成果を出せない業者に依頼しても。「お金を持ち逃げされて終わる」と警鐘を鳴らした。
パネルディスカッションの後半では、パネリストがオートデスクのACCをはじめとするソリューションへの要望や期待などを語らい合った。
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