コベルコ建機は、主力の20トンクラス油圧ショベルを約10年ぶりにフルモデルチェンジした次世代ICT建機「SK200」を発表した。OTA(Over the Air)技術の採用で、建機導入後も進化を止めず、機能を拡張し続けることで、施工自動化や接触事故防止など建設工事の多様化するニーズに常に応えられる。
コベルコ建機は2026年8月3日、主力の20トンクラスを約10年ぶりにフルモデルチェンジした次世代ICT油圧ショベル「SK200」を発売する。先立つこと2026年5月15日には、東京国際交流館プラザ平成 メディアホールで開催した発表会で実機を初披露した。
発表会で代表取締役社長の山本明氏は、新型機のコンセプトを「誰でも簡単にすぐに使え、熟練者でも最大限能力を発揮できる機体を目指した。(マシンカラーの)ブルーグリーンは、建機の色としては王道ではないかもしれないが、“ユーザー現場主義”を象徴し、常識を覆して新しい価値を創造するという思いを込めた」と説明した。
山本氏が言及した“建機の新しい価値”とは、建設業界で慢性的な「人手不足」や重篤災害の1つに数えられる建機接触事故に対する「安全確保」に加え、ここ数年で重大な懸念材料となっている「コスト高騰」も含め、建設工事を取り巻く課題を解決に導く新機能を指す。そのためにSK200には、日々変化する現場の要望に柔軟に対応すべく、無線ネットワーク経由で最新機能に更新する仕組み「OTA(Over the Air)」を実装した。
これまで建機の機能追加は、モデルチェンジなどハード面で改造するしかなかったが、制御システムそのものを建機の動きを緻密に自動で動かす「電気パイロット制御システム」へと変更したことで、後からOTAでソフトウェアをアップデートして拡張できるようになった。
他メーカーのICT建機との違いについて山本氏は、「OTAだけなら他にもあるが、現場目線でアジャイル開発し、今までできなかった機能が次々に加わり、建機を日々進化させられる点が差別化ポイント」と強調した。スマートフォンのように、いろいろなアプリケーションをインストールすることで、最新機能を常に使えるようになるわけだ。
SK200に先行で搭載している最新機能としては、広島大学との産学連携で実用化に至った「先進アシスト」がある。両者は、大学内に「コベルコ建機夢源力共創研究所」を2018年に設立して以降、建機の制御技術を共同研究しており、さまざまな熟練度のオペレーターの操縦データを解析し、掘削や旋回の操作を半自動化するアシスト機能を開発した。
掘削は通常、ブームとアーム、バケットの複合操作が必要となるが、掘削アシストではアームの引きに同調してブーム上げとバケットの角度を自動で最適化する。そのため、経験の浅いオペレーターでありがちな土こぼれや車体の浮きが起きない。また、車体の旋回動作でもブームやアームを上げる複合操作を伴うが、旋回アシストにより、設定ポイントに近づくと旋回スピードが減速し、ベテランが長年の勘で行っている微妙なレバー操作を自動で調整する。
執行役員の山下耕治氏は「バケットが土に入る角度、掬(すく)う量、そして動作の滑らかさがアシストされるため、初心者でも熟練者と遜色ないスムーズな施工が実現する。掘削と旋回という今までは経験がものをいうとされていた操作が、アシスト機能で誰にでも容易な作業となる」と自信をみせた。
他のアシストでは、右ペダルのみで左右のクローラが直進する「シングルペダル」、前傾姿勢にならずに片手のレバー操作だけで長距離走行できる「ジョイスティック走行」、積載重量を計測して過積載の場合は赤色の画面表示とブザーで知らせる「ペイロード」なども備える。
ICT施工への対応では、3Dではなく、あえて2Dのマシンコントロール(MC)とマシンガイダンス(MG)を採用した。その理由について山下氏は、「正確な数値で掘削や整形をサポートし、出来形をそろえられるのは3Dと同じ。ただ2Dであれば、3Dデータを作成する手間や高額なシステム導入費用を抑えられ、標準モニターで設定できるため、小規模工事でも使いやすい。また、国土交通省では現在は3Dを推奨しているが、2DのICT施工要領を新たに整備すると発表しており、今後の普及が見込まれるためだ」と語った。
一方で3Dが必要な現場では、オプションでOTAの機能拡張に用いる通信コントローラーを装着しているため、機器の後付けなしで、ソフトウェアアップデートにより、変更もできる。
機体のハード面では、油圧機器のスペックやシステムのセッティングも見直し、生産性を現行機比で約10%向上させた。旋回トルクは約12%アップし、旋回時にトップスピードまで力強くスムーズに加速する。アーム掘削力は約7%上がり、力強い掘削で、サイクルタイムの短縮が見込める。エンジンは、「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(2014年基準)」に適合し、低回転域からも力強いパワーを発揮する。
安全面では、建機との接触による死亡事故の24%が“前方”で起きていることを踏まえ、4台の広角カメラを取り付け、4つの映像を合成した360度の鳥瞰(ちょうかん)映像で常にモニタリングして事故を未然に防ぐ。さらに、操縦者が視認しにくい右前を範囲に加えた周囲270度のエリア内で人の姿を検知すると、モニター表示とアラームで危険を知らせるだけでなく、人との距離に応じて段階的に自動で減速または停止する。
人以外にも、橋梁(きょうりょう)や壁、電線、地下埋設物など、あらかじめ設定した作業範囲外の6面に近づくと自動停止し、不要な衝突を避けられる。
コックピット(キャブ)内の改良点は、長時間作業でも疲れにくい自社開発の操縦席「コンフォートシート」を導入。耐久性の高い合皮を使い、背中や臀部(でんぶ)の通気性を改善した他、体圧を分散するシート構造や上下方向からの振動を吸収するサスペンションも内蔵している。
ディスプレイは10インチのタッチ式で、360度の鳥瞰映像、車体角度、機能のON/OFFなどの多くの情報を表示。オプションでは、冷却水温や油温、燃料、尿素水の残量を示す画面にも切り替えられる。
車両の鍵も物理キーからリモートキーに変更。離れた場所に居てもドアの解錠/施錠やエンジン始動が可能になった。搭乗前にエアコンを操作できるため、熱中症対策としても有効だ。
昨今の原油高騰に伴う建機のランニングコスト増には、消耗部品のロングライフ化で応える。作動油の交換時期は5000時間から6000時間へ、作動油フィルターは1000時間から2000時間へ、エンジンから排出されるススや黒煙を捕集する後処理装置「DPF」は4500時間から9000時間へとそれぞれ延長した。メンテナンスのインターバルを延ばすことでコストを低減し、建設現場の脱炭素にも貢献する。
マシンの長寿命化では、既存の「稼働管理システム」と「予防保全システム」で、マシンダウンリスクを軽減。
稼働管理システムは、GPSから建機の位置や稼働状況、燃費情報、警報などを収集し、複数の重機を管理する。遠隔診断で異常への早期対応や事前対処が可能になり、定期交換部品の寿命延長や高額修理費の発生などの抑制につながる。
予防保全システムは、建機の稼働データを自動解析し、数値が一定レベルに達した場合に適切な対応を提案してエンジンや油圧ポンプの重大な故障を予防する。
SK200の市場投入に合わせ、2022年12月にリリースした遠隔操作システム「K-DIVE」とICT建機との連携も強化する。2027年度には、SK200の先進アシストや周囲検知の機能が、そのまま他のK-DIVE対応機でも利用可能になる見込み。その先には稼働データのAI活用による安全レポート作成やオペレーター評価、自動運転などへの展開も見据える。山本氏は「K-DIVEでクラウドに蓄積される稼働データをAIで解析することで、現状と比較し、改善提案などに役立て、当社の目指すソリューションビジネスに発展させていければ」と今後の抱負を語った。
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