4月からついに始動した「BIM図面審査」 実務上のポイントと制度の意義を解説【緊急寄稿】BIM確認申請(1/2 ページ)

2026年4月1日、建築確認申請の新たな方式「BIM図面審査」がスタートした。既に本制度による確認済証が交付され、複数の確認検査機関で申請が動き始めている。本稿では、筆者(オートデスク テクニカルスペシャリスト)の立場からBIM図面審査の実務上のポイントを整理するとともに、制度の意義を確認申請の効率化にとどまらない観点から解説する。

» 2026年06月01日 10時00分 公開

1.いよいよ始まったBIM図面審査:制度概要とその意義

 BIM図面審査では、BIMソフトウェアで作成したモデルからPDF形式の図書とIFC形式のBIMデータを出力し、確認申請用CDE(共通データ環境)を介して提出する。確認申請用CDEとは、所定の要件を満たしたクラウド上の審査環境を指し、現時点では建築行政情報センター(以下、ICBA)が運営する「ArchSync」が提供されている。

 BIM図面審査での審査対象は、あくまで従来通りの2次元図書にとどまり、BIMデータは建物形状の理解を補助するための“参考資料”という位置付けだ。2029年春にはBIMデータそのものを審査対象とする「BIMデータ審査」が予定されており、BIM図面審査は最初のステップとなる。

BIM確認申請のロードマップ BIM確認申請のロードマップ 出典:ICBA「BIM審査ポータルサイト」

 重要な前提として、BIM図面審査の利用はあくまで“任意”だ。従来の紙や電子申請による確認申請も継続し、BIM図面審査は新たに加わった選択肢の一つとなる。規模要件もなく、小規模住宅から大規模建築物まで利用可能だ。現時点では、全国で20弱の確認検査機関や特定行政庁が受付を開始している(参照:BIM審査ポータルサイト)。

 では、設計者がBIM図面審査を選ぶ意義とは何だろうか。

 背景にある国の狙いは、確認申請の効率化だけではない。建築物の情報を社会全体で活用できるデータとして蓄積/流通させるには、データの記述形式を標準化する必要がある。そのため、BIM図面審査は、BIMという共通フォーマットで建築を記述し、関係者間で合理的にコミュニケーションできる基盤をつくる入口として設計されている。

 また、建築業界の現場では人手不足が深刻化する中、脱炭素社会への移行やストック型社会の実現といった社会的要請を受け、省エネ基準適合の義務化や4号特例の縮小による審査対象の拡大など、設計者と審査者双方の業務負荷は増す一方だ。従来のやり方を脱し、整合性の確認や図面作成の負荷を合理的に軽減するための手段として、BIMの活用が求められている。

 制度の仕組みを見ていく中で、こうした問いの答えを考えたい。

2.整合性を担保する仕組み:入出力基準と誓約書

 BIM図面審査の実務上の核となるのが「入出力基準」だ。BIMデータの作成方法と、そこからの図書/IFCデータの書き出し方法を定めた基準で、「形状」「属性」「計算」の3つの柱で構成されている。

 形状に関する基準は、BIMの機能でオブジェクトを入力し、同一のオブジェクトから複数の図面に表示することで図面間の整合性を確保する。属性に関する基準は、室名、面積、防火性能などの属性情報を一貫して表示。計算に関する基準は、建ぺい率や容積率をBIMの機能で自動算出する。

 設計者は「入出力基準適合誓約書」を提出し、入出力基準に沿ってBIMデータを作成して、そこから図書を書き出したことを誓約する。審査機関は誓約された項目について、図面間の整合性確認を省略できる。裏を返せば、設計図書の整合性に対する責任を、設計者自身が誓約という形で引き受ける仕組みだ。BIMを使って図面を生成すれば、「図面間の整合性は原理的に担保される」という前提のもとに、審査の一部省略が成り立っている。

BIM図面審査の制度概要 BIM図面審査の制度概要 出典:ICBA「BIM審査ポータルサイト」

 入出力基準では2種類の整合性(分野内の整合/分野間の整合)が定義されているが、分野間の整合を確保するうえでは、意匠・構造・設備を一つのBIMプラットフォーム上で扱える環境が最も自然で望ましい。データ形式の変換に伴う作業手間や作業時間が不要で、リアルタイムに連携できるからだ。

BIM図面審査における整合性の考え方 BIM図面審査における整合性の考え方 出典:建築BIM推進会議「BIM図面審査 申請・審査マニュアル」をもとに筆者作成

 ここで注目したいことがある。建築確認制度の中で、提出すべき図書の種類や記載事項は、これまでも定められてきたが、「図面をどう作るか」というプロセスにルールが設けられることはほとんどなかった。また、BIM図面審査に伴い「確認申請図書表現標準」が制定され、防火設備の図記号や色について全国共通の表現が参考として示された。設計事務所ごとに異なっていた凡例表現に共通の指針が示されたことは、審査の円滑化だけでなく、図面という共通言語の在り方を業界全体でそろえる点でも意味があるだろう。

 任意の制度ではあるものの、「入出力基準」と「確認申請図書表現標準」の登場は、BIMという手法を通じて、建築情報の作り方と伝え方に初めて本格的な標準化の枠組みが持ち込まれたことを意味している。そして図面の標準化は、確認申請という手続きの範疇(はんちゅう)に閉じない意義があるものだと筆者は考えている。

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