他工種よりも遅れている内装工事のBIM対応と未来への展望【現場BIM第4回】建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(4)(3/3 ページ)

» 2023年08月04日 10時00分 公開
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 BuildAppを大ざっぱに説明すると、ゼネコンから受け取ったBIMモデルをLOD400という部材レベルまで分解されたデータ詳細度に変換し、内装工事の主要建材(軽量下地材や石こうボードなど)をプレカット割付したデータを作成し、建材メーカーと工事会社に渡す仕掛けだ。言い換えれば、内装工事での“BIMの共通データ環境”ともいえる。

 現在、納品する建材にはQRコードを貼付し、スマートフォンでQRコードを読み込むことで、その建材の正確な間配り位置を確認したり、工事完了後の出来高報告まで一気通貫で活用できたり、サービス内容のアップデートを図っている。そうしたプロセスの中で、調書作成→見積管理といったメニューも利用できる。

 ここでの内装工事会社は、BIMソフトウェアそのものを使うこともなければ、拾い・積算業務も不要で、施工図を作る必要性もない(もしくは相当量が削減される)。

 その一方で、BIMモデルと現場測量との照合作業やARを使った出来形確認/チェック、もしからしたらデジタル墨出し作業など新しい仕事を求められるが、BuildAppを使いこなすことで、「BIM対応施工会社」となり、常にゼネコンに上位指名される存在になるはずだ。

 現在も実現場での実証を続け、内装工事などの施工効率の上昇(作業時間の減少や生産性向上)、現場廃棄物の減少、二酸化炭素排出量の減少(まだ微減)、高速カッター使用回数の減少による安全性の向上などといった成果は出つつあるものの、まだまだ課題は山積み。詳報については、改めて伝える機会を設けたい。

BuildApp上のBIMモデルのパーツ情報から生産情報をQRコードで出力し、生産工場でのプレカットプレファブにつなげる BuildApp上のBIMモデルのパーツ情報から生産情報をQRコードで出力し、生産工場でのプレカットプレファブにつなげる
現場に納材されたプレカット建材の管理にも同一のQRコードを利用 現場に納材されたプレカット建材の管理にも同一のQRコードを利用
内装工事会社向けのBIMサポートイメージ 内装工事会社向けのBIMサポートイメージ

早期の「デジタル武装」で大きな果実を刈り取れ!

 2022年11月に開催した建築BIM環境整備部会で、2025年度からBIMによる建築確認申請の試行が始まることが明らかにされた(参照:国土交通省「第13回建築BIM環境整備部会(令和4年11月25日開催)資料3:将来像と工程表の改訂について)。

 残念ながら建築分野では、土木のように公共建築工事におけるBIM利用が原則化されることはなさそうだが、国土交通省や建築BIM推進に関わる方々との話を聞く限り、5年程度の熟成期間を経て、2030年には設計・施工でBIMが、ある程度は定着しているようなロードマップをイメージしている。2024年〜2026年には、BIMに限らないが「デジタル武装」して生産性を飛躍的に高める内装工事会社がどんどん出現してくるはずだ(そうならなければいけない)。そういう内装工事会社がゼネコンから選ばれ、BIMパートナーとして影響力を増し、収益力も強化されていく。そして、建設業界で、魅力的な会社・仕事内容に変化し、就職や転職の市場でも求心力が働き、成長のスパイラルが生まれることだろう。

 一方で、そうでない会社(デジタル武装していない会社)は負のスパイラルに陥り、自社単独では立ち回ることができず、他社に吸収合併されればまだ良い方で、廃業の憂き目に遭う会社も増加することも予想される。

 連載第1回で述べたように、BIMを基盤にした建設プロセスの改革が進まなければ2030年には建設需要に対して職人さんが9%(23万人)も不足する世の中が到来してしまう。関係者が一丸となって、建設業界が丸ごとアップデートできるよう、野原グループも微力ながら、変わる建設業界のフロントランナーとして、先頭を走っていく所存だ。

 変化や進化を求めた内装工事会社は必ずその恩恵にあずかることができる。その変化や進化は早い方がより良く、後追いになると得られる果実が小さくなるのは世の常だ。既に内装工事でも、「BIM対応の号砲は鳴った」とみている。

 ぜひ読者の皆さんには、スタートダッシュをかけて未来の明るい建設業界に向けて駆け出していただきたい。同時に、「BIMを徹底活用した今後の内装工事の来るべき姿」をともに追求し、実現していきたいと考えている。

著者Profile

山崎 芳治/Yoshiharu Yamasaki

野原グループCDO(Chief Digitalization Officer/最高デジタル責任者)。20年超に及ぶ製造業その他の業界でのデジタル技術活用と事業転換の知見を生かし、現職では社内業務プロセスの抜本的改革、建設プロセス全体の生産性向上を目指すBIMサービス「BuildApp(ビルドアップ:BIM設計―製造―施工支援プラットフォーム)」を中心とした建設DX推進事業を統括する。

コーポレートミッション「建設業界のアップデート」の実現に向け、業界関係者をつなぐハブ機能を担いサプライチェーン変革に挑む。

著者Profile

守屋 正規/Masanori Moriya

「建設デジタル、マジで、やる。」を掲げるM&F tecnica代表取締役。建築総合アウトソーシング事業(設計図、施工図、仮設図、人材派遣、各種申請など)を展開し、RevitによるBIMプレジェクトは280件を超える。2023年6月には、ISO 19650に基づく「BIM BSI Kitemark」認証を取得した。

中堅ゼネコンで主に都内で現場監督を務めた経験から、施工図製作に精通し(22年超、現在も継続中)、BIM関連講師として数々の施工BIMセミナーにも登壇(大塚商会×Autodesk主催など)。また、北海道大学大学院ではBIM教育にも携わる。

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