大和ハウスグループがBIM×FMで座談会 研修施設「コトクリエ」で試みた“一気通貫BIM”【BIM×FM第8回】BIM×FMで本格化する建設生産プロセス変革(8)(1/3 ページ)

本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。本稿では、大和ハウスグループの研修施設「みらい価値共創センター」で、「一気通貫BIM」に挑戦したメンバーが、ファシリティマネジメント領域で導入した「BIM-FMシステム」についてディスカッションした座談会をお届けします。

» 2025年07月11日 10時00分 公開

 大和ハウスグループの研修施設「みらい価値共創センター(愛称:コトクリエ)」では、設計・施工・維持管理の全ての段階でBIMを活用した「一気通貫BIM」の実現に挑戦しました。その結果として導入されたのが、BIMモデルを活用したファシリティマネジメントツール「BIM-FMシステム」です。

 導入から3年を経て、当時のプロジェクトメンバーが再集結し、導入時に抱いていた理想と実際の運用で見えてきた現実のギャップ、そしてそこから得られた教訓についてディスカッションしました。

建物概要

名称:大和ハウスグループ みらい価値共創センター(愛称:コトクリエ)

竣工日:2021年6月10日

延べ床面積:17048.07平方メートル(5,157.04坪)

階数:4階

基本計画・全体監修:小堀哲夫建築設計事務所

設計・施工:大和ハウス工業、フジタ

URL:https://www.daiwahouse.co.jp/kotokurie/

筆者提供

対談参加者(敬称略、役職は取材当時)

  • ファシリテーター:

  赤尾関剛志(フジタ 建築本部建築統括部BLC推進部)

  • コメンテーター:

  西本良一(大和ハウス工業 プロパティマネジメント室 室長)

  内田信之(大和ハウス工業 プロパティマネジメント室 主任)

  小田博志(フジタ 建築本部 BIM推進統括部 エグゼクティブエキスパート)

  河渡宜宏(フジタ 建築本部 建築統括部 BLC推進部 次長)

左から河渡氏、内田氏、筆者、西本氏(小田氏はリモート参加) 左から河渡氏、内田氏、筆者、西本氏(小田氏はリモート参加) 提供:フジタ

――BIM-FMシステムの導入目的や当時の期待を教えてください。

西本 コトクリエは、「将来の夢をかなえ、つなぐ『みらい価値共創人財』を社会と共に育む場」です。この建設プロジェクトは全社を挙げた一大プロジェクトでした。BIM-FMシステムの導入背景には、「一気通貫BIM」というコンセプトがありました。大和ハウスでは、設計、施工、維持管理まで全ての段階でBIMモデルを活用することを目的に、導入を進めていきました。

内田 私は特に、BIMビュワーが持つ可視化の力に大きな可能性を感じていました。例えば、故障した設備の配管系統をBIMモデル上で視覚的に把握し、影響範囲を直感的に確認できる点に魅力を感じました。加えて、対象機器にメンテナンス履歴を登録して管理できることは、業務の効率化に直結すると考えていました。

 さらに、異常箇所の特定や対応が迅速になることも期待していました。そして、事業所ごとに異なる施設管理の方法を、将来はBIM-FMシステムで一元化できるのではないかという展望も描いていました。

河渡 私もBIMビュワーに注目していました。BIMモデルを活用すれば、専門知識がなくても誰でも維持管理に関われるようになる。これは大幅な効率化につながり、結果的にオーナーのメリットにもなると考えました。

小田 大和ハウスグループは保有施設が多く、今回のプロジェクトを起点にグループ全体へFM文化を浸透させる第一歩になると期待していました。

筆者提供

〜導入理由とBIM-FMシステムへの期待〜

  • 設計から施工、維持管理までをBIMでつなぐ「一気通貫BIM」の仕上げとして、BIM-FMシステムを導入。
  • BIMビュワーを活用し、故障箇所の可視化や履歴管理などによる業務効率化を期待。
  • 維持管理の属人化を防ぎ、将来はグループ全体へFM文化を浸透させる展望も持っていた。
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