野原ホールディングスは、国交省BIMモデル事業に採択された鋼製建具生産サプライチェーンを対象にしたBIM活用方法の検証で、スチールドアの見積もり、作図、建具製作期間が最大50%削減されたと明らかにした。
野原グループの野原ホールディングスは、野原産業エンジニアリング、東亜建設工業と共同で実施した「鋼製建具生産サプライチェーンにおける生産性向上のためのBIM活用方法の検証」(令和4年度 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業「パートナー事業者型」)の実証結果を発表した。
鋼製建具(金属製建具)とは、アルミサッシやスチール製のドア・門扉などで、スチールドアは、オフィスや配送センター、工場、病院、集合住宅などの出入り口(開口部)や防火区間に設置されている。
これまでは専門工事会社で、2次元の設計図書から建具製作図を作成していたが、作図の手間や技術者不足などにより、納期に影響を及ぼしている。
一方、工場では建具製作図などの2次元図面情報から加工機につながるCAD/CAMソフトウェアに、「バラ図」としてデータを再入力しているが、熟練した専門知識が必要なバラ図を描ける技術者が高齢化で不足し、繁忙期の許容オーバーで製作納期がずれ込むことがあった。
そのため、人の手による作業が大半を占め、生産工場数の減少や担い手不足が深刻化する中では、スチールドアの需要に供給が追い付かない事態も想定され、早急なシステム化が求められている。
そこで、3者はBIMデータから建具製作図を出力したり、工場のCAD/CAMにつなげたりする仕組みを構築することで、納期短縮やコスト削減につながることが期待できるとして、実証するに至った。
実証では、BIM設計〜生産〜施工支援のプラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」を用い、スチールドアなどの鋼製建具の見積、製作図、工場生産までのプロセスをBIMデータでつなぐ仕組みの構築・効果検証を行った。
各社の役割は、野原ホールディングスと野原産業エンジニアリングが、システム構築とBIM技術支援、野原産業エンジニアリングが鋼製建具施工図作成と製造連携実施、東亜建設工業が施工BIM作成と建設プロセス評価、シンテックが建具工場のCAD/CAM連携技術協力、スチールドア製作協力工場はバラ図自動化による書出し情報の精査をそれぞれ担当した。
手順は施工BIMモデルを「BuildApp 建具」に取り込み、スチールドアのオブジェクト情報と建具分類コード(Nコード)をひも付けて、見積もりもデータベースと連携してタイムリーに書き出した。同時に、BIMモデルのスチールドア周囲の壁や床、天井の情報と、Nコードを組合せて、スチールドアの施工図を自動で作成した。
バラ図は、CAD/CAMソフトウェアの開発会社シンテックとともに、BuildApp 建具とバラ図作成ソフトウェアを連携させて、必要なデータ項目をCSV形式で書き出し、バラ図を自動出力した。
実証の結果、施工BIMとの連動による建具メーカーの見積もり期間が43%短縮した。施工BIMからの建具製作図出力では、専門工事会社の作図期間とゼネコンの承認期間のトータル45%を削減。施工BIMからの建具生産工場のCAD/CAM連動による建具製作期間は、半減となったという。
また、今後の課題として、BIMモデルから取得するオブジェクト情報とデータベース化された階層コードとの連携をはじめ、オブジェクト情報と建具の納まりに関係する建具周囲の情報をチェックしやすい情報として専門工事会社や施工者への提示、承認されたスチールドアオブジェクト情報と工場バラ図作成に必要な情報のスムーズな連携などが浮かび上がった。
今後、3者はBIM設計〜生産〜施工支援プラットフォームのBuildAppを用い、スチールドアなどの鋼製建具の見積もり、製作図、工場生産までのプロセスをBIMデータでつなぐ仕組みの構築に加え、サプライチェーン全体(施工者、専門工事会社、メーカー、工場など)の生産性向上に継続的に取り組んでいく。
さらに、国土交通省が主導する「建築BIM推進会議」などで実証結果を踏まえた提言を行い、「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第2版)」の改良や業界内の建具BIM標準化を目指す。
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