今回は、BIM主要工種についてはテーマに採り上げられることも多いが、建設プロセスの後工程で、工種も多様な“内装工事”のBIM対応に焦点を当て、今後の来るべき姿を論じてみたい。
日本のBIMは、これまでゼネコンを中心に仮設、躯体、設備、外装を対応範囲に進められてきた。サブコン、BIM屋さん(親しみを込めてここではそう呼ぶ。施工BIM業者、鉄骨など専門工事のBIMに特化した業者、その他の国内外BIM対応業者)も急速にBIM対応能力を上げてゼネコンの要求に応えている。鉄骨、鉄筋、型枠工事などの領域では、スーパーゼネコンを中心に、BIM屋さん、そして先進的なファブリケーターや製造加工工場がタッグを組み、BIMから建設資材の製造工程までつながり(製造CAD自動作図、加工機連動)、業務プロセスの変革と飛躍的な生産性の向上が期待できる段階に入ってきたといえる(ただし、業界全体に浸透するにはまだ時間がかかりそうだが)。
野原グループでも、鉄筋の加工から現場施工まで一貫して行っているが、加工機のハード面の対応やBIMとそれをつなぐソフト面の課題解決にはもう少し時間が必要で、同業の某社にはかなり水を開けられている(数倍〜2桁倍以上の生産性の違いがある)。
BIMの一つの目的といえる「DfMA(Design for Manufacture & Assembly:製造組立容易性設計)」の考え方は、大手住宅メーカーがユニット化やパネル化などで一歩先を走っており、非住宅分野ではあまり注目されてこなかったが、「BIMを徹底的に使いこなす」こと(設計段階だけでなく、建設の全工程でBIMデータを一貫して活用し、生産性向上につなげていく)が日本の建設業界の将来を左右する分水嶺になると思えば、今後はもっと深く議論されるべきだ。
さて、ゼネコンにとってのBIM主要工種(仮設、躯体、設備、外装)については語られることも多いため、今回は建設プロセスの後工程で工種も多様な内装工事のBIM対応にフォーカスを当ててみたい。さらに、内装の一部ともいえる建具工事については、次回取り上げてみたい。
★連載バックナンバー:
『建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜』
本連載では、野原グループの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。
床や壁、天井といった内装工事領域では、主に以下を理由にBIM対応が後回しになってきた。
・建設プロセスの最後の方
・全体の建築コストの数%程度でインパクトが小さい
・工事会社の規模がおしなべて小さく、建材も多種多量に細分化しているため、どこから手をつけたらいいか分からない
上記が誰もが認識している内装工事業界の本当の姿だろう。将来もBIMは不要で、BIMがなくてもやっていけると豪語する施工会社が多いのも事実だ(おそらく全体の2分の1〜3分のくらいが該当するのではないか)。
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