【新連載】建設産業構造の大転換と現場BIM「業界アップデート!マジで、やる。」建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(1)(1/2 ページ)

本連載では、野原ホールディングスの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。

» 2022年12月13日 10時00分 公開

建設業界のアップデートは待ったなし

 日本の建設業界は、就労者の高齢化と長時間×重労働が深刻化し、それらを起因として若年層からは不人気で、そこに追い打ちをかけるように期待の星であった外国人労働者も円安に伴い日本離れが起きつつある。まさにいま人手不足スパイラルが加速し、成り行き任せでは業界自体が立ち行かない日がもうそこまで来ている。そのことは、建設業界に身を置く誰もが頭では理解している。が、まだ腰が重い。

 まずは、改めて建設業界の現状を簡単におさらいしておこう。2030年には建設需要に対して、ベースライン成長の場合、建設技術者は6%の約3万2000人(内閣府予想の成長実現ケースを当てはめると10%の約6万人)、建設技能工は9%の約23万1000人(同14%の約36万4000人)が足りなくなると予想されている。

「建設技術者」のベースライン成長シナリオにおける需給ギャップ試算 出典:建設HR「建設技術者の2030年未来予測(2022年版)」
「建設技能工」のベースライン成長シナリオにおける需給ギャップ試算 出典:建設HR「建設技能工の2030年未来予測(2022年版)」

 筆者は、建設業で多くの中途社員採用の面接に立ち会っているが、「とにかく若い人から辞めていく」「なんとかそれを止めたいが1社だけの努力では無理」「しかも会社の動きも遅い」というネガティブな声を必ず耳にする。ゼネコン、サブコン、その他の出身者しかりである。学生の就職希望ランキングも、建設業は確実に年々順位を落としている。

 4週8閉所/完全週休2日制への取り組みや2024年4月から建設業にも適用される時間外労働時間の上限規制により、ある程度は人材定着の力学が働くかもしれないが、生産性が今のまま変わらなければ全体効率は低下(工期の長期化)することになる。こうした実情を加味すれば、前述の建設需要に対する人手不足は、より悪化する可能性があるという前提に立つべきだろう。

 また、昨今は環境負荷削減が喫緊の問題であり、特にゼネコンは重要な経営課題とみなし施策を強化している。だが、業界全体を見渡すと現場の動きはまだ遅いと言わざるを得ない。

 さてここ数年は、「建設DX」サービスが業界内で活況を呈している。品質、安全、スケジュール、予算などの施工管理業務をサポートしてくれるサービスやドローンを使った測量、検査、ロボット搬送、ロボット施工などさまざまだ。業界を挙げた素晴らしい盛り上がりだが、その積み上げだけでは建設業界のDXは不十分だといえよう。なぜなら、建設とは、部分ではなく全体のプロセスであり、DX(Digital Transformation)とは改善ではなく変革、言わば「形質転換」であり、サナギが蝶になるかのごとくの“変身”だからだ。そう、従来の姿や在り方から、まるっきり変わってしまうことを指すのである。

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