EARTHBRAINは、コマツが国土交通省の建設現場のデジタル変革「i-Construction 2.0」に基づく、独自のICT施工“スマートコンストラクション”の開発を加速させることを目的に、コマツ子会社のLANDLOGを吸収して2021年に誕生した企業だ。スマートコンストラクションが目指す建機の遠隔化/自動化で何がもたらさられるのか、CSPI-EXPO2025の「i-Construction 2.0の世界」と題した講演をレポートする。
EARTHBRAIN(アースブレイン) IoT開発担当 ヴァイス・プレジデントの大場重生氏は、「第7回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2025)」(会期:2025年6月18〜21日、幕張メッセ)で「i-Construction 2.0の世界〜遠隔・自動化施工〜」と題して講演した。国土交通省が推進する建設現場のDX戦略「i-Construction 2.0」の解説とともに、遠隔化/自動化施工の最新技術と実証事例、導入拡大に向けた課題解決のアプローチを紹介した。
i-Construction 2.0では、2040年度までに建設現場の生産性を1.5倍にすることを目指し、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱に据えている。EARTHBRAIN IoT開発担当 ヴァイス・プレジデント 大場重生氏は、目指すのはオートメーション化やリモート化ではなく「課題を解くこと」と話す。
日本には、生産年齢人口の減少、インフラの老朽化、災害の激甚化/頻発化への対応といった課題がある。EARTHBRAINは、こうした課題に対し、効率と安全を両立させたソリューションを提供すべく、開発を進めている。
i-Construction 2.0は、国土交通省が2016年度から推進するi-Constructionを進化させ、2024年4月からスタートした。大場氏は、“i-Construction 2.0のおさらい”として、2024年のチャレンジと2025年の活動状況を説明した。
大場氏は、2024年のi-Construction 2.0の施工事例として大型ダムやトンネルを挙げ、自動化は大規模工事に施工がとどまっている状況を示した。一方、遠隔化は、河川に代表される直轄の工事で、自動化よりも1歩進んでいるという。
国土交通省は、2025年には「導入拡大のための要領策定」と「工種拡大」を目標に定めている。ただ、具体的な手法に関しては、業界やソリューションを提供する側に委ねられている。大場氏も、建設会社や実際にシステムを導入した顧客とのディスカッション/情報共有を続けており、可能性や新たな価値が浮かび上がってきているとした。
遠隔ソリューションで得られるメリットは、生産性の向上や労働環境の改善、安全な工事環境の実現などがある。
現場で稼働する建機は、朝から夕方まで連続で稼働することは少ない。現場の進捗によっては、1日に2時間程度の稼働の場合もあるだろう。しかし、そのような現場でも、これまでは当然ながらオペレーターが現場に出向く必要があった。遠隔ソリューションなら、現地に行かずに必要なタイミングのみ遠隔地から建機を操作できるようになる。さらに、複数の現場を1人のオペレーターが担当することも実現し、生産性の向上に大きく寄与する。
大場氏は、昼にベテランのオペレーターが難しい作業を行い、若手用に簡単な作業を残すという新しいワークスタイルもあり得るとした。残った作業は、ベテランのオペレーターが作業を終えた後の夜間に、若手が遠隔で作業する。遠隔での建機操作は、遠方の現場に出向くのが体力的に辛くなった高齢のオペレーター、子育てなどのために現場に長時間出ることが難しい女性オペレーターにも、新しい働き方を提供できることになる。
他にも遠隔ソリューションは、災害の復旧工事や立坑/深礎工事といった危険で過酷な工事が安全かつクリーンな環境で行える利点もある。業務時間の短縮と合わせ、女性や若手の入職希望者を増やすことにもつながる。
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