背景には、BIMの理念や目的に対する理解不足と誤解、長年築き上げてきたやり方に対して発想の転換ができない人間の性(さが)のようなものに起因することが多いと感じる(自分で当たり前だと思っていることを他人から変えろといわれると、より頑固になるのは至極当然)。
だからこそ、本連載も含め、もっと啓発活動に尽力しないといけないのだが、「そろそろ、その考えは危険」と施工会社や建材メーカーに伝えるのが、今回の主たるメッセージかもしれない。
さて、4〜5年前くらいから、比較的大規模の極一部の内装工事会社は大手ゼネコンからBIM対応を求められていると聞く。そうした工事会社には申し訳ないが、ゼネコンからみれば、まだ手探りで方向を探っているのが実態だ。
現状では、内装工事会社はゼネコンから意匠BIMを渡され、2DCADで施工図化して、変更箇所を何度も書き直している。ロス率(例:建材発注では、現場での諸事情を想定して、ある程度多めに発注するため、実際には使わないこともある)は、従来通りの設定でコスト削減、CO2排出量や現場廃材量といった環境負荷削減には至らないし、施工方法も従来のままで、配送や搬入の問題、施工後のゼネコンとの精算交渉の煩雑さも何ら変わらない。
要は、内装工事の従来プロセスの中に、CAD/図面に変わってBIMを入れてみたというだけのものだ。何を目指すのかゴールの共有もできていなければ、そこにたどり着くロードマップが示されている訳でもない。当然、内装工事会社は何の効果も実感できず、ただただゼネコン指示のもと、フラストレーションと疲労感を溜め続けていると聞く。
これだと、前述の「内装工事にはBIMは不要」の考えが助長されても仕方がないし、こういう状況だから建材メーカー側もBIM対応を決めかねている状態だ(自社製品のBIMオブジェクト化とデータ流通も遅々として進んでいないのも一例)。
当社は現場目線と、業界ヒエラルキーの下層からの立場で、BIMの徹底活用を提唱しているので、まだ過渡期とはいえ、今のままの状態を捨て置くことはできない。
上も下もフラットで平等かつ対等のパートナーとしてそれぞれが連携し、建設プロジェクトに当たっていくのがBIMの本質で、建設プロセス全体の生産性向上への扉が開くカギだ。ただ、現時点では、特に内装工事を担う内装工事業者は会社規模が大きくないため、ゼネコンや設備サブコンに比べ、BIM対応能力や体力の差は歴然なので、当社はその間に入り、ハブとしての役割を果たそうとしている。
後は、若干私たちのサービスの紹介が含まれてしまうがご容赦いただき、BIMを徹底活用した今後の内装工事の来るべき姿をイメージしていきたい。
ほとんどのゼネコンが、各社の提唱する「BIMのワンモデル化」とする理念の下、内装工事を含めた全工種で、設計〜施工〜製造加工の連動を目指している。前述の理由から、若干内装(+建具)工事が後回しにはなっているが、早晩、内装工事会社や建材メーカーがその対応を迫られるのは間違いない。
一方で、内装工事会社は他工種の工事会社に比べ、会社の規模が小さく、まずBIMソフトウェアを購入すること自体に資金面で後ずさりし、BIM人材を採用し、育成するとなれば、真正面から検討することさえ不可能だ。
新しいことを始めようとすれば、最初は必ず手間であり、コストがかかるのは言わずもがな。同時に社内の意識改革も不可欠だ。しかし、慣れてしまえば必ずそれが当たり前になるので、まずは最初の一歩を踏み出せる環境整備が欠かせない。
当社は建材商社であり、長きにわたり、内装工事会社の皆さんに支えられてきた。内装工事会社とともに歩んできた野原グループが描く、「BIMを徹底活用した今後の内装工事のあるべき姿」とは、逆説的になるが「BIMを意識しないBIM活用」ともいえようか。
内装工事会社の業務は、数量積算、見積、図面チェック、工程計画作成、職人山積、施工管理、出来高管理、精算資料作成・交渉といった具合に進んでいくわけだが、「BIMを意識しないBIM活用」とは、BIMソフトウェアを使用せずともBIMデータを活用し、これらの諸業務を円滑に実現しようという試みだ。もちろん各プロセスの作業効率が飛躍的に上がり、将来の人手不足の解消に貢献することがゴールとなる。さらには現場廃棄物の削減、二酸化炭素の削減など社会要請にも応えていくための唯一の道筋ではないだろうか。
一例として、当社がゼネコンと内装工事会社をつなぐプラットフォームとして準備している「BuildApp(ビルドアップ)内装」というクラウドサービスを紹介したい(執筆時はβ版)。
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