BIMを本当に活用するなら「業務プロセス改革」を実現せよ【日本列島BIM改革論:第2回】日本列島BIM改革論〜建設業界の「危機構造」脱却へのシナリオ〜(2)(3/3 ページ)

» 2021年12月08日 10時00分 公開
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海外と日本で異なる「BIMへのアプローチ」

 海外と日本のBIMへのアプローチの違いは、日本がこれまでBIMを導入してきた経緯にも原因があるのではないだろうか。日本では、2次元CADによる設計・施工プロセスが既に出来上がっていて、それ自体に問題があると考えている人は少ない。2次元CADの段階では、海外より、日本の方が「いい建物を作る仕組みや技術」が優っていた。そのため、いい建物を作るためには、プロセスを変えなければならないという海外のアプローチと、その必要性を感じず、BIMは便利なツールであればよいと捉えていた日本では、当然ながら認識の違いが生じてしまう。

 そのため、国内では、2次元CADによる生産プロセスの中で、2次元CADの代わりにRevitなどのBIMツールを利用しようとした。現時点では、BIMツールは2次元CADを代替するだけの仕組みと機能を持つようになってきたので、少しずつBIMツールの活用は進んできている。

 このように日本では、従来の2次元CADのプロセスのままで、2次元CADをRevitなどのBIMツールに置き換えることが、BIM活用であると認識している。日本人の優秀さ故かもしれないが、こうした過信は徐々に次の時代への対応を遅らせているように思う。

国内でのBIM活用に対する認識は、2次元CADの代替ツールという考えがいまだに大半を占める Photo by Pixabay

建設業界でのプロセス改革を進めるために

 日本の建設業界は、BIMやICTの進歩の過程で今まさに岐路に立っている。日本人の優秀さに頼った従来通りの業務プロセスを残すか、新しい技術に適応できるプロセスに変えてゆくかのどちらかを選ばなければならない。いったん、ここで従来通りの業務プロセスを残す選択をしても、いつかは新しいプロセスに変えてゆく必要があるだろう。新技術に対応できるプロセスについては、長年にわたる英国で研究成果として、国際規格にもなったISO 19650を参考にするべきだろう。私は、ISO 19650は日本の業務プロセスの中でも十分活用できるものだとみている。

 業務プロセスの改革は、日本の建設業界全体の問題とするべきで、企業単位での取り組みでは十分とはいえない。取っ掛かりは企業単位で取り組むのだが、最終的には、発注者を含む、設計・施工・維持管理運用に関わる全ての関係者が向き合うことが望ましい。

 本連載「日本列島BIM改革論」の重要テーマの1つに、「日本の建設業界のプロセス改革」を挙げておきたい。プロセス改革が具現化することで、建設業界のデジタル化が進み、情報に新しい価値を生み、その先にこれまで見たことのない新たな世界が無限に広がってゆくであろう。

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

BIMプロセスイノベーション 代表。前職の大和ハウス工業で、BIMの啓発・移行を進め、2021年2月にISO 19650の認証を取得した。2021年3月に同社を退職し、BIMプロセスイノベーションを設立。BIMによるプロセス改革を目指して、BIMについてのコンサル業務を行っている。また、2021年5月からBSIの認定講師として、ISO 19650の教育にも携わる。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)、「Autodesk Revit公式トレーニングガイド第2版」(共著、2021/日経BP)。

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