土砂災害では、平時のリスク把握や事前対策、災害発生後の迅速な対応などには、土砂崩壊箇所の予測が有効です。文献7では、現場調査しなくても全国どこでも入手可能な公開データ(標高、傾斜、土壌、植生、災害履歴など)を使用して、機械学習による予測を試みており※7、このような分析にもGISが役立ちます。
シミュレーション予測にGISを活用する事例も増えています。水害シミュレーションの精度を高めるには、流体の摩擦抵抗の設定根拠となる詳細な土地利用データが求められます。文献8では、深層学習を用いた画像認識「セマンティックセグメンテーション」を航空写真に適用して土地利用分類を推定し、津波シミュレーションに取り入れています※8。また、文献9ではGISによって、緑や沿道建物の道路空間の地表面温度への影響を分析し、ヒートアイランド対策として注目される街路樹などのグリーンインフラの効果を検討しています※9。
文献10では、橋梁(きょうりょう)が閉鎖された場合の社会的影響を検討するために、各種地理空間データを用いています※10。下図は、橋梁閉鎖時の迂(う)回路を算定して可視化したものです。
文献11では、下図のように鉄道線路の安全性で重要となる軌道レールの変形や座屈を周辺環境のデータなどを用いて、予測するモデルを提案しています※11。
3次元モデルの利用も進んでいます。文献12では、地物の3次元モデルに対して、河川情報を基に生成した水面を重ね合わせることで、リアルタイムに状況変化を反映するシステムを提案しています※12。文献13では同様の試みを農村地域の水路に適用し、3次元モデルと水位の組み合わせで、誰にでも把握できるように可視化できます※13。
地理的な多種多様なデータを重ね合わせるGISは、計画から、設計、施工、維持管理、災害対応など、あらゆる場面に用いられています。各種情報は位置情報を併せ持つことで価値が高まるわけです。3次元モデルの普及に伴い、さらに高度で多様なユースケースが広がるものと期待されます。また、地理空間データをLLM(大規模言語モデル)と連携させる“MCP化”も始まり※14、AIの適用もより容易になりつつあります。
※14 国土交通省「「地理空間MCP Server - MLIT Geospatial MCP Server - (α版)」
GIS:人工衛星を街づくりに活用 三菱地所設計が開発余地を3D化した「容積充足率マップ」公開
GIS:衛星×AIでネットにない全国2900万台の「月極駐車場」を網羅する「PARK STOCK」
建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(7):建設DX実現までの指標となる“変革レベル”と、可能性を秘める生成AI【最終回】
メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024:点群からタグ付きのローカル3D地図を作成 コムエッジの「Com's Mapper 3D」
GIS:600種類以上のGISデータ実装 土地の可能性を地図で可視化する竹中工務店の「GISCOVERY」
PLATEAU:「PLATEAU」で3D都市モデルビュワーを改良、建物作図機能やGoogleストリートビュー連携を追加
建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(6):ICT活用で施工管理に変革の兆し 重責ある“5大管理”を効率化!【連載第6回】Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10