i-Con2.0実現にはAI活用が不可欠 3つのオートメーション化を加速するAI【土木×AI第37回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(37)(1/2 ページ)

国交省が進める「i-Construction 2.0」でも、AI活用が建設業の生産性向上を実現するための重要な要素技術となっています。今回は、i-Construction 2.0で標ぼうする3つの“オートメーション化”で、AIがもたらす可能性について土木学会の論文を引用しながら考察します。

» 2025年12月25日 10時00分 公開

 建設現場の生産性向上の取組として、国土交通省では2016年度から、ICT施工をはじめとする「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を進めています※1。2024年4月には、建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性1.5倍を2040年度までに向上することを目指し、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」を3本の柱とする「i-Construction 2.0」を策定しました※2。下図はi-Construction 2.0で実現を目指す社会のイメージです。

 i-Construction 2.0の生コンクリートの品質管理では、生コン車のシュートの生コン流下画像にAIを適用し、スランプ試験を廃止する検討が進められています※3。その一例をみても、i-Constructionの自動化/省人化でAIが鍵となっています。

i-Construction 2.0で実現を目指す社会(イメージ) i-Construction 2.0で実現を目指す社会(イメージ) ※2

※1 国土交通省「i-Construction」

※2 国土交通省「『i-Construction 2.0』を策定しました〜建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)〜」

※3 国土交通省「コンクリート生産性向上検討協議会(第14回・令和7年2月26日)」

連載バックナンバー:

“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト

本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。

施工管理のオートメーション化にAIを活用、出来高管理も効率化

 建設現場ではここ数年で、施工管理に活用するための定点カメラが普及してきています。従来は現場で人の目による観察で、建設機械の歩掛や作業状況を知ることで出来高を管理していましたが、AIを用いて映像から建機を検出することで、日々行われる出来高管理が効率化されると考えられます。下図は、各種建機を画像から検出している例です(文献4)。

AIによる建機の検出例 AIによる建機の検出例 ※4

※4 「AIによる建設機械検出システムの開発と検出精度を向上する試み」早川健太郎,黒台昌弘,増田裕正,蒔苗耕司/AI・データサイエンス論文集1巻J1号p313-319/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2020年

 建設現場の作業員の位置情報は、安全性や生産性向上に重要な役割を果たします。位置情報を取得するには、画像※5やビーコン※6を用いた方法などが提案されています。文献7では、照度に影響されず、屋内や地下空間、広域の現場でも計測できるLiDARによる点群を用い、深層学習動体検出技術も利用して作業員を検出する方法が研究されています(下図)※7

作業員の検出例とカメラ画像:バウンディングボックスが検知された人を表す 作業員の検出例とカメラ画像:バウンディングボックスが検知された人を表す ※7

※5 「Spatial-temporal attentionを導入した再帰型ニューラルネットワークに基づく重機との接触事故リスクの推定」五箇亮太,前田圭介,藤後廉,小川貴弘,長谷山美紀/AI・データサイエンス論文集5巻1号p117-125/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

※6 「デジタルツインのための屋内施工空間を想定した作業員位置の 3 次元可視化」窪田諭,笹井理市,安室喜弘/AI・データサイエンス論文集6巻2号p150-158/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

※7 「廉価なLiDARを用いた建設作業員の検出及び位置推定に関する研究」中原匡哉,小林泰雅,石濱裕幸,井藤博章,フィンアンズン,今井龍一/AI・データサイエンス論文集6巻1号p245-257/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR