建設業界では、現実の工事現場などを仮想空間に再現する“デジタルツイン”が浸透しつつあります。その基盤となるデータの1つが「地理情報」です。1970年代に国土地理院がコンピュータの地図=GISを導入した後、阪神・淡路大震災の復旧活動で有効性が認識されたことを機に急速な発展を遂げました。現在では、国交省が整備した3D都市モデルのオープンデータ「PLATEAU」に準じ、地方自治体でも3Dモデル化が進み、都市計画をはじめ、防災、観光、モビリティーなど、もはや社会インフラツールとして分野を超えた利活用が始まっています。
国土交通省の国土交通データプラットフォーム※1や3次元都市モデル「PLATEAU(プラトー)」※2などの各種オープンデータの整備に伴い、地理情報の高度な利活用が進んでいます。PLATEAUでは、街づくり、防災/防犯、地域活性化/観光、モビリティー、市民参加/教育、環境/エネルギー、インフラ管理などの幅広いデータ活用が試みられています。
地理情報のデータ活用の基盤となるのが、「地理情報システム(GIS:Geographic Information System)」です。地理情報システムは、1963年にカナダの地理学者ロジャー・トムリンソン(Roger Tomlinson)が農村開発計画立案のために提案した、土地に関する膨大な地図的データを迅速に集積して処理するシステムに、その原型があります※3。
※3 「地域計画のための地理的情報システム」トムリンソン R. F./地学雑誌78巻1号p45-48/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/1969年
下図は災害対策へのGISの適用例です。特定のデータを持ったレイヤを位置情報をキーとして重ね合わせていくことで、関連性が一目で分かるようになります※4。GISでは、地図の上に各種情報を重ねることで分析や可視化を行いますが、それには位置情報が必要です。位置情報を座標で表現するところは、CAD※5とも共通しています。
※4 国土交通省「GISとは」
※5 「“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(32):BIM/CIMの歴史と本質を学会論文で振り返る【土木×ICTのBack To The Basic Vol.4】」BUILT
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
文献6では、豪雨時に浸水して通行不能となった道路を検出し、避難経路を提示するシステムを提案しています※6。航空写真から深層学習で推定した浸水状況と、避難場所の位置、現在位置、避難場所までの経路探索、経路上の標高差を下図左のように統合的に可視化しています。
また、右図は避難経路システムによる経路探索の結果です。多種多様な地理空間データを重ねることで、最適な災害避難計画の策定に活用できます。
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