建設DX実現までの指標となる“変革レベル”と、可能性を秘める生成AI【最終回】建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(7)(1/3 ページ)

連載最終回となる今回は、建設DXをどう進めていけばいいか分からない人の助けとなる“変革レベル”と、DXの要素技術として昨今注目を集めている生成AIについて解説します。

» 2024年11月28日 10時00分 公開

 不定期ながら続けてきた本連載も、今回が最終回となりました。掲載第1回目から2年近く経ちますが、建設業を取り巻く環境は、2024年の「働き方改革関連法」施行に伴う、時間外労働の罰則付き上限規制の適用をはじめとして大きく様変わりました。

 建設業界は、工事業者、ゼネコン、サービス事業者など多くの関係者が関わる複雑な業界ですが、他の業界に比べて「ICT(情報通信技術)」の導入が遅れているといわれています。ICTの導入により、建設業界の課題となっている効率性や生産性の向上を実現しようというのが、「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。連載第1回目でも重要キーワードとして取り上げました。

 そして建設DXを支える技術キーワードも、変わりつつあります。例えば「AI」です。AIは2年前も重要なキーワードでしたが、今や全ての業界、業種で最重要キーワードとなっており、それは建設業界でも変わりません。ICTに関連する技術は、業界に身を置く私たちも驚くほどのスピードで進化を続けています。

 建設業界の方と話をしていると、「建設DXに取り組みたいけれど、何をどうすればよいのか、指標がわからない」という相談を受けることが多くあります。事業規模や得意とされる業務によって、アプローチは異なりますが、最終回となる第7回は、建設DXを実現するためのステップ、指標に関して解説したいと思います。

 あくまでも、数多ある考え方やアプローチの1つにしかすぎませんが、少しでもご参考になればと思います。

連載バックナンバー:

建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上』

本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。建設業の「働き方改革」につながる現場作業の生産性向上や安全衛生といった身近な業務改革を中心に、実例をベースにお伝えしたいと考えています。

建設DXを実現するための5ステップ

 過去の連載でも触れてきましたが、建設DXを要約すると「デジタル技術で、ビジネスモデルや業務プロセス、業界構造をも含めて革新すること」になります。なんとなく理解できますが、具体的に何をどうすれば良いのかの指南書やマニュアルがないため、これまでICT導入に積極的でなかった企業にとっては、「何から始めればよいのかすら、わからない……」というのが本音でしょう。

 そういった方々に参考として提示させていただいているのが、日本建設連合会が提唱している「建設現場における建設DXの変革レベル」です。このモデルに関しては、ご存じの方も多いかと思いますが、各レベルに関して補足説明をしていきましょう。

 レベル1:可視化、オンライン化、ビッグデータ化

 建設現場のデジタル化は“可視化”から始まります。紙ベースの作業をデジタル化し、オンラインでの情報共有を可能にすることも含みます。データ共有により、現場の状況をリアルタイムで把握し、効率的な意思決定が可能になります。

  

 レベル2:自動処理アプリによるプロセスの自動化

 次のステップとして、手動で行っていたプロセスを自動化することが重要です。例えば、出来高確認や品質管理などのプロセスを自動処理アプリで行うことで、作業の効率化や生産性の向上が期待できます。

  

 レベル3:アプリ間のデータ連携やデータ活用

 このレベルでは、異なるアプリケーションでのデータ連携を強化することで、データの一元管理と活用が可能になります。各プロセス間の情報共有がスムーズになり、業務全体の効率が向上します。

  

 レベル4:データドリブンな建設現場の実現

 データに基づいた意思決定を行うことにより、建設現場の生産性と安全性を向上させます。センサーなどのIoTデバイスを活用して、リアルタイムでデータ収集/分析し、最適な作業計画を策定して管理することも実現するでしょう。

  

 レベル5:建設ビジネスモデルの抜本的変革の実現

 最終的には、デジタル技術を活用し、建設ビジネスモデルそのものを変革することが目標となります。

 例えば今後、建築物の工場生産が増加することで生産計画やサプライチェーンマネジメントなど、製造業と同じような最適化が建設業界でも求められるでしょう。また、3Dプリンタによって現場の施工業務が抜本的に変わる可能性もあります。

 技術革新によって、業界の構造自体が変わる……という流れが理想的な変革といえるかもしれません。

 全ての企業がこのモデルに当てはまる訳ではありませんが、自社がどのステージにいるのか、次に何を目指せばよいのか、参考になる指標だと思います。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.