国土交通省は、2025年度の「優良木造建築物等整備推進事業」先導枠に、西松建設の木造/S造ハイブリッド5階建て大学施設プロジェクトと、三井不動産の上層4層を木造化した11階建て事務所ビルのプロジェクトを採択した。
国土交通省は2025年7月18日、「令和7(2025)年度優良木造建築物等整備推進事業」の先導枠に、西松建設の木造/S造ハイブリッド5階建て大学施設プロジェクトと、三井不動産の上層4層を木造化した11階建て事務所ビルのプロジェクトを採択したと発表した。
西松建設の「(仮称)西松サステナブルグリーンプロジェクト」(木材使用量1平方メートル当たり0.175立方メートル)では、千葉県鴨川市に、国産のスギ/ヒノキ構造用集成材を用いた二方向ラーメンと鉄骨とのハイブリッド構造とした5階建て大学施設を建設する。延べ床面積は約1662平方メートル。
二方向ラーメン構造を主体とし、パネルゾーンを鉄骨とした接合をはじめ、通し柱や鉄骨柱などの各種組み合わせを試行したハイブリッド構造が特徴だ。木製梁の端部には炭素繊維による補強を施し、靱性の向上と梁貫通穴の補強を兼ねた。CLT面材と高減衰ゴムダンパーによる制震壁も一部に採用。防耐火面では、木材と鋼材の着火温度差が接合部に及ぼす影響について耐火実験で検証し、木梁とRCスラブ、鉄骨仕口部などの実用化を図っている。
木質部材の品質確保のため、接着剤は原則的に工場で注入。またダブルスキン構造のカーテンウォールを採用し、木造架構を見せながら熱気や湿気を排出する。その他の外壁は、押し出し成形セメント板として、耐久性を高める構法とした。
三井不動産の「(仮称)日本橋本町1丁目5番街区計画」(木材使用量1平方メートル当たり0.165立法メートル)では、東京都中央区に、上層4層を木造化した11階建て事務所ビルを建設する。延べ床面積は約1万7902平方メートル。
2〜7階は外壁にCLT耐震壁を配置した木造/鉄骨造混構造、8〜11階は木造耐力壁構造の立面混構造とし、特許技術に頼らない「鉄骨造+木造」を目指した。
上4層の木造部分には住宅向けに流通している構造材を活用。テナント向けには、4.05(階高)×6(スパン)メートルの架構を提案し、部材の歩留まり向上にもつなげている。計画では、住宅用に開発された木造床システムをベースに、防火性や遮音/防振性能、耐久性などを強化してテナントビル仕様とした。また、流通材の積極活用に加え、北海道のトドマツをCLT床材に使用する。
優良木造建築物等整備推進事業では、木造化に関する先導的な設計/施工技術が導入されるプロジェクト(先導枠)や炭素貯蔵効果が期待できる中大規模木造建築物の普及に貢献するプロジェクト(普及枠)を支援している。
普及枠の採択結果は2025年6月に公表し、ミヨシ産業の「ミヨシ産業本社社屋新築工事」(木材使用量1平方メートル当たり0.208立方メートル)と、重松商事の「はかた70thプロジェクト」(同0.141立方メートル)が採択されている。
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