住友林業が英ロンドンで開発を進めていた木造6階建ての環境配慮型オフィス「Paradiseプロジェクト」が完成した。英国における環境性能の高いオフィスの供給不足という課題に対応する。
住友林業は2025年5月9日、英ロンドンで開発を進めていた木造6階建ての環境配慮型オフィス「Paradiseプロジェクト」が竣工したと発表した。資材調達から建設までのCO2排出量削減や省エネ設備の導入などにより、環境性能の高いオフィスの供給不足という課題に対応する。
今回のプロジェクトは、英不動産開発会社Bywater Propertiesとの合弁会社Paradise11Limitedと共同開発したもので、ロンドンの木造オフィスとしては最大級の規模となる。木造(コア部分RC造、一部柱梁S造)で延べ床面積は7445平方メートル。2025年3月に竣工し、5月8日に現地で竣工セレモニーを開いた。
建物には約2300立方メートルの木材を使用。建物内部の梁(はり)や柱、天井などの構造材を現し仕上げとするバイオフィリックデザインを採用し、木の質感を生かした内装としている。構造材として使用する木材の約80%は建物解体後に再利用可能な設計でサーキュラーエコノミーにも配慮した。
資材の製造、運搬、建設段階で排出されるアップフロントカーボンは、床面積1平方メートル当たり413キロCO2eに抑制。これはロンドン広域自治体GLA(グレーター ロンドン オーソリティ)が、プロジェクト着工前計画時に示していた基準値(同1000キロCO2e)に比べ約6割の削減に相当する。炭素固定量は建物全体で約1900トンCO2e。排出量の算定には、住友林業が日本単独代理店契約を結んでいるソフトウェア「One Click LCA」を活用した。
建物の運用段階で発生するオペレーショナルカーボンについても、高遮熱性能の外壁の採用や屋上太陽光発電による自家発電の導入などで削減。これにより、建築物の稼働中のエネルギー効率を示す「EPCレート」で最高評価のA、スマートビルディング認証の「WIRED SCORE」でも最高評価のPlatinumを取得した。この他、環境認証「BREEAM」でExcellent、健康配慮型オフィス認証「WELL」でGoldを取得する予定だ。
英国政府はオペレーショナルカーボン排出削減の一環として、EPCレートがFレベル以下の建物の賃貸(新規契約/更新を含む)をすでに禁止。2030年にはB未満の非住宅建物の賃貸も禁止する方針を示している。一方、2023年時点でBレベル以上を満たすオフィス物件は英ロンドンで2割程度と不足しており、今後、環境性能の高い建物の需要拡大が予想される。
住友林業は、2022年に英国現地法人Sumirin UKを設立し英国不動産市場に進出。現在までにロンドンとマンチェスターで新築/増改築を含む6件の開発案件を手掛ける。
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