国交省は、上下水道施設のメンテナンス高度化や効率化に向けた「上下水道DX 技術カタログ」を拡充した。今回は埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえ、下水道探査を重点技術と位置付けるなど、AIやドローン、非破壊地盤探査といった計45件の新技術を追加した。
国土交通省は2025年10月3日、上下水道施設のメンテナンス高度化や効率化を実現する新技術をまとめた「上下水道DX 技術カタログ」を拡充したと発表した。画像認識AIやドローン、四足歩行ロボット、非破壊地盤探査など45件の新技術を追加掲載している。
昨今は八潮市の道路陥没事故の要因となった水道管の老朽化と、施設管理を担う熟練職員の減少が問題となっている。国交省は将来も安定した上下水道サービスの提供を維持するため、デジタル技術の導入を積極的に後押ししており、その一環で2025年3月、上下水道DX 技術カタログの初版を公開した。
今回の改訂では、「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」による第2次提言を踏まえ、実用化が求められる重点技術を分類した。分類対象は、管路内調査の無人化/省力化技術、大深度空洞調査技術、大口径管の厚さと強度の測定技術、センシングによる継続的なモニタリング技術だ。
代表的な技術として管路内調査の無人化/省力化技術では、Liberaware(リベラウェア)の超狭小空間点検ドローン「IBIS2(アイビスツー)」、ブルーイノベーションの球体型ドローン「ELIOS 3(エリオス スリー)」、長水路トンネル調査技術協会の長水路トンネル内面カメラロボット、福山コンサルタントらのAI画像認識を活用した管路損傷の自動検出などを選定した。
他にカンツールの浮流式点検用システム「フロート」は、下水道管内の水の流れを利用して管内をカメラ撮影。従来困難とされていたΦ800〜3000ミリの大口径でも下水道管内のスクリーニング点検が可能で、回収用ロープにより、2キロの長距離点検を行った実績もある。
大深度空洞調査技術は、応用地質の地盤緩み把握を対象とした「微動アレイ探査」と「高精度表面波探査」の2件。微動アレイは常時微動(自然界や人間活動による微小な振動)を計測し、表面波探査は地表面を打撃して発生した振動(表面波)を観測する。地盤の緩み領域を把握することで、サウンディングなどの貫入試験を実施する位置を効果的かつ効率的に設定できる。
大口径管の管厚/強度測定技術は、日東建設の加速度計を内蔵したハンマーでコンクリートを打撃したときの打撃応答波形を測定/解析する非破壊検査法を選んだ。非破壊でコンクリートの圧縮強度、表面近傍(表面から50ミリ程度まで)のうき/はく離、表面の劣化度合いを推定する。測定結果は瞬時にディスプレイ表示し、測定データはCSVファイルで保存して表計算ソフトで整理できる。
センシングによるモニタリング技術は、鹿島建設の管路内の光ファイバを活用した高精度ひずみ分布計測システム。定期点検だけでなく、地震発生後でも緊急に変状の可能性がある位置を特定できる。
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