住友林業が設計・施工した平面混構造の6階建て新社宅が、茨城県つくば市に完成した。木造混構造中大規模集合住宅のモデルケースとして位置付け、普及拡大を目指す。
住友林業は2025年6月5日、茨城県つくば市に木造混構造6階建ての社宅が完成したと発表した。社宅は中央をRC造、両端を木造とする平面混構造で建設し、混構造用に開発した構法/部材、オリジナル耐火構造部材を採用した。住友林業は同物件を「木造混構造中大規模集合住宅」のモデルケースと位置付けている。
社宅は2025年6月1日から利用を開始した。敷地面積は2825.53平方メートル、総戸数は46戸。1階にサテライトオフィスや店舗を配置し、2〜6階を住戸とした。住戸は約26平方メートルのシングルタイプが41戸、約52平方メートルのファミリータイプが5戸。設計・施工は住友林業が手掛けた。
構造面では、建物全体の水平力を中央のRC造に集中させる設計とし、木造部材への負担を軽減して地震の揺れなどに強い構造とした。木造部分には、日建設計と共同開発した「合成梁構法」を初採用した。RC床版とのこぎり状に凸凹をつけた木梁を組み合わせ、梁の高さを抑えて天井高を確保するとともに、木造梁の剛性を高めて床の振動を抑制する。
耐火部材としては国土交通省認定を取得した木質耐火部材「木ぐるみCT(2時間耐火構造部材)」を初採用した。木造とRC造の接合部分にはカナイグループと共同開発した「混構造用接合金物」を採用。木造の小梁とRC造の大梁や柱を接合する金物を規格化することで、コスト削減と設計作業の効率化を実現した。
施工面ではRC構造用接合金物をコンクリート打設前に取り付けるなど、現場の作業を簡略化。同規模のRC造と比べて工期が長い傾向にある混構造でも、同等の期間で完工した。
今回の物件では建設時のエンボディドカーボン(資材調達から解体時までのCO2排出量)削減に向けて、LCA算定ソフトウェア「OneClickLCA」を使用。設計時からCO2排出量を可視化し、削減効果をモニタリングしながら設計を進めた。建物全体で322立方メートル(構造材154.8立方メートル、仕上材167.2立方メートル)の木材を使用。炭素固定量は267.239トンCO2e bio(CO2ベース)で、40年生のスギ約878本分に相当する。
高効率設備の導入や屋上スペースへの太陽光発電の設置などにより、建物全体で75%以上のオペレーショナルカーボン(建物の運用段階で発生するCO2排出量)を削減し、Nearly ZEH-Mを取得している。
住友林業の企業内研究機関「筑波研究所」では、木や緑の持つ機能や特性、心身に与える効果を研究している。2025年6月から1年間、東京大学と共同で床の硬さや光、温湿度、香りや社員の心理的/生理的な状態を測定し、旧社宅と比較して木が心身に与える効果を検証する。非木造建築を木造に変える効果を定性的/定量的に立証する方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.