講演では、アプリ連携型のシステム構成でBIM関連のデータを取得し、業務を効率化する実例として、高砂熱学工業とArentが連携して構築したプロダクトを採り上げた。プロダクトはコードネーム「PLANETS(プラネッツ)」の名で、機能別に9つのSaaS群がBIMと連携し、設計から維持管理までに至る全ての業務プロセスをカバーしている。
9つのSaaSプロダクトとは、1.設計自動化システム、2.BIMデータからの自動拾い出しと工程表作成の見積支援システム、3.過去データや市況データを活用した見積り/原価管理システム、4.引合プロセスを可視化/標準化する引合システム、5.ダクトや配管などの干渉回避や施工効率性を考慮した図面を半自動で作成する施工図自動作成システム、6.BIMデータと歩掛情報から工程表や出来高曲線を自動作成する工程管理システム、7.BIMデータを用い、現場の360度画像でリモートでの施工の進捗管理を実現する進捗管理システム、8.検査箇所を自動検出して検査書類も自動作成する品質管理システム、9.建設資産や運用コストのシミュレーションを行う運用管理システム。建設事業の設計、見積、図面作成、工程管理、品質管理、建物運用といったガラパゴス化していた業務プロセスを一つに束ねる。
鴨林氏は「世界でも類をみないBIMを中核とした業務プロセス改革だ」とし、建設会社に蓄積されている“暗黙知”の知見をシステム化できるとの自信をみせた。
他にも、プラント建設大手の千代田化工建設とArentによる合弁事業「PlantStream(プラントストリーム)」にも触れた。熟練プラント設計士の暗黙知となっているノウハウをアルゴリズム化し、CADによる高精度な自律設計を実現。数カ月かかる大規模設計を数十秒に短縮し、工期やコスト削減が可能になる。既に外販で国内だけでなく海外企業にも導入されており、Arentが掲げる社内で有効利用されていない蓄積されたデータをAIでノウハウ化することが、大きな価値を生む好例といえるだろう。
講演の最後、鴨林氏は「日本のノウハウ自体をデジタル化すると、世界中に売れるシステムになる。データが貯まれば、さらにそのノウハウがAI化されて便利になる。それは建設会社がプライドを持って仕事にあたってきた結果。自信を持ってもらえるように、当社も頑張っていく」と語った。
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