2009年のBIM元年から15年――。国交省の3D都市モデルプロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」との連携に加え、2025年からスタートする「BIM確認申請」など、日本のBIM活用は新たなフェーズに突入している。今後、BIM活用が国内で進展するうえで、建設ライフサイクル全体でステークホルダーをつなぎ、コミュニケーションやコラボレーションを可能にする「オープンBIM」と共通データ環境(CDE)の重要度がますます高まるという。
「Archi Future 2023」(会期:2023年10月26日、東京・有明TFTホール)に、鹿島建設の矢嶋和美氏と足達嘉信氏、グローバルBIMの林晃士氏の3人が登壇。「大規模プロジェクトにおける設備BIMを中心とした総合調整の推進〜オープンBIMに対応した共通データ環境(CDE)よる複数協力業者との連携と竣工後の3Dモデル活用〜」と題した講演をオムニバス形式で行った。
講演でははじめに矢野氏が「建築BIMのトレンド オープンBIM時代の到来」というテーマで登場。日本の建設業の現状を、建築技能労働者数が年々減少する一方で、国内建築投資額が増加傾向というアンバランスな状況にあると整理。「今後、間違いなく建てたくても建てられない時代が到来する」と警鐘を鳴らし、課題解決のカギを握るのがBIMの利活用との認識を示した。
国でもBIM活用普及が重要と見做(な)し、2023年7月に、政府は総合的かつ長期的な国土の在り方を示す「国土形成計画(全国計画)」と、国土の利用に関する基本的な方向を示す「国土利用計画(全国計画)」を閣議決定した。その中で、国土の刷新に向けた重点テーマの1つとして、「デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成」を挙げ、具体的な取り組みとし、「建築BIM、PLATEAU、不動産IDを一体的に進める建築/都市DXにより、地上地下を含む建物内外からエリア/都市スケールまで高精細なデジタルツインを構築する」との方針を示している。
矢野氏は、「建物と都市のデジタルツインは、都市計画、防災、カーボンニュートラル、モビリティなどの高度な基盤になる。BIMデータには、建物の設計・施工という建設業界の枠組みを超えて、都市を形作る資産データとして、不動産業界にも広がるような価値が求められている」と補足する。
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