建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。本連載では、建設DX研究所のメンバー各社が取り組む、建設DXの事例や技術開発について詳しく解説していきます。今回は、構造計画研究所が提供する施工現場での豪雨リスクを予測し、重機や作業員の安全確保に役立てる洪水予測技術について紹介します。
日本各地で「これまでに経験したことのない豪雨」が相次いでいます。気象庁の観測によれば、1時間に50ミリを超える短時間強雨の発生件数は過去40年間で約1.5倍に増加。地球温暖化の影響が気象の極端化として顕在化しており、従来の治水インフラだけでは十分に対応しきれない状況が生じています。
「100年に一度」とされてきた水害が数年おきに発生するリスクが現実化し、社会全体で新たな備えが求められています。
建設業界にとっても豪雨災害は大きな脅威です。安全対策が整っていても、重機や資材が浸水すれば工期やコストへの影響は避けられません。建設現場にとって水害は、まさに「突然襲い掛かる最大のリスク」といえます。水害リスクを避けるためには、特に以下の3つの観点が重要となります。
つまり、現場に直結する判断材料として「より詳細でリアルタイムな予測情報」が強く求められています。
従来の河川監視は国や自治体が主体でしたが、近年はAIやIoT技術を活用した水位観測や民間の洪水予測システムが登場し、予測データの活用も可能です。
河川や排水路に設置されたセンサーが水位や流量を常時監視し、閾値を超えるとクラウドを介して即時通知。現場へのアラート発信が容易です。
水位、流域全体の雨量、ダム放流量、潮位などの多様な蓄積データを活用し、未経験規模の洪水にも対応した水位予測が可能です。
予測情報をBIM/CIMや工程管理システムと組み合わせることで、「何時までに作業を中断すべきか」「どの重機を優先退避すべきか」といった判断を支援できます。
こうした技術により、従来は経験や勘に頼っていた対応が、データに基づく科学的判断へと進化しています。
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