建設DXのキーワードとして業界内で広く認識されているのが“BIM”だ。しかし、鴨林氏は、現時点のBIMは3DCADの意味でしか使われておらず、業務効率化はできていないと指摘する。BIMを前提としたRevitを3DCADとして使うのは合理的ではない。また、Revitではデータ入力やモデリングに際し、少なからず労力を要すると実感する人は多い。
Arentは、こうしたRevit活用状況に対し、AI活用でRevitへの入力を誰でも簡単にできる自動化ツールを社内で運用している。講演では、ツールを使ってRevitを操作する例を動画で紹介。Revitで実行したい処理のコードをAIで生成し、Revitを操作するデモを示した。
AIに対する指示は人が普段の生活で使っている自然言語でよく、実行コードの作成には、エンジニアやプログラマーが使う専門知識も不要だ。生成AIに「あなたは優れたRevitアドインの開発プログラマー。全ての壁の長さの合計を出すコードを書いて」と指示を出すと、その処理をRevitで行うためのコードが表示される。コードをRevit上に貼り付ければ処理が実行される仕組みだ。
鴨林氏は「Revitは検索機能が弱いと思っていた。今までは集計表を作って難しい検索をしていたが、あんなことは誰もやりたがらない」と振り返る。生成AIを使ってRevitのコードを作れば、人間の直感では扱いずらいRevitの検索機能でも誰もが使えるようになる。
あらゆる分野で活用が進むAIは、建設分野でも有用性が見込まれるが、現実には活用があまりされていないようだ。その要因はもととなるデータが蓄積されていないことにある。
建設業は、他業種に比べて業務フローが複雑だ。多重下請けの構造やステークホルダーが多くデータ管理が煩雑で、データそのものが散乱することもある。鴨林氏はこうした環境でも、アプリ連携型のツールを使うとデータは取得できると断言する。仮にBIMデータで設計、見積、原価管理などの業務ごとにアプリケーションを使い分ければ、それぞれの段階で各種のデータが蓄積されることになる。
ただAIは、入力したデータを外部にさらしてしまうセキュリティ面での懸念がある。また、どのAIを使ったらよいのかとの疑問もある。Arentでは、生成AIの法人向けプラットフォーム「BizGenie(ビズジーニー)」を提供している。
BizGenieには、直感的で使いやすインタフェースや建設業の業務に最適化したテンプレートも用意されている。また、最新のAIを最適な形で利用でき、進化が早いAIの世界で最新のAIモデルが使える。
Arentの組織体制でも、子会社の「VestOne」を2024年8月に商号変更し、「Arent AI」を起ち上げ、建設DXと親和性の高い生成AIに焦点を絞って事業転換している。
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