高砂熱学や千代田化工と共創開発したArentの「BIM×自動化」で実現する建設DXArchi Future 2024(1/3 ページ)

「暗黙知を民主化する」を掲げ、建設DXを推進するスタートアップ企業のArentは現在、建設業向けにDXコンサルティングから、システム開発、事業化までのプロダクト共創開発に注力している。高砂熱学工業とはBIMを核に据え、建設生産プロセスのデータを統合したSaaSプラットフォームを構築し、千代田化工建設とはプラントの自律設計ツールを開発した。

» 2024年12月23日 14時16分 公開
[川本鉄馬BUILT]

 建設DXを技術力とナレッジ、事業創出力の3つのアプローチで進めるArent(アレント)の代表取締役社長を務める鴨林広軌氏は、「Archi Future 2024」(会期:2024年10月24日、TFTホール)で、「『BIM×自動化』で実現する建設DX戦略―BIMのポテンシャルを最大化』と題して講演した。「アプリ連携型」でシステムを構築することで、業務データの蓄積とAIによる高度な検索が実現しやすくなる。

 Arentの前身となる会社は2012年の設立で、その後、2020年に現社名に社名を変更し、2023年には東京証券取引所のグロース市場に上場を果たしている。前の会社がソフトウェア開発を行っていた関係で、DXの導入やサポートをプログラムレベルから支える技術を持っており、現在は建設業向けにDXコンサルティングから、システム開発、事業化までのプロダクト共創開発で伴走支援している。

 鴨林氏は今回のセミナーで、建設DXを推めるために必要となる基本的なシステム構成やRevitの処理を自動化する実例、DXに向けたAIプラットフォームなどを紹介した。

そもそも「DX」って何だろう?

Arent 代表取締役社長 鴨林広軌氏 Arent 代表取締役社長 鴨林広軌氏 写真は全て筆者撮影

 建設業に限らず、現在の日本には“DX”という単語が日常的に飛び交っている。だが、「そもそもDXとは?」を明確に理解している人は多くないようだ。

 鴨林氏は、その理由を日本でのDXに対する解釈の幅が広いとし、Arentが定義するDXを示した。ArentのDXでは、「システムや技術を意識しなくても使える」を重視する。DXを形作るのは最新のITかもしれないが、それをユーザーが簡単に使えることが欠かせない。

 鴨林氏は、完全にゼロから開発するスクラッチで作った社内システムが多いのか、モダンなツールを連携して業務をしているのかの業務システムの違いを説明した。

 日本では、経営資源を統合管理する基幹システム「ERP」を自社用にカスタマイズ、またはイチからスクラッチで作ってしまう会社が多い。しかし、こうした自社オリジナルのERPは、稼働環境をオンプレミスからクラウドに移行することすら難しい。経済産業省は、そういった問題が2025年以降に多発するとの警鐘をDXレポートで鳴らしている。いわゆる“2025年の壁”と呼ばれるものだ。

 対してシンプルでモダンなツールを組み合わせ連携している会社は、フットワークが軽い。モダンなツールは従業員が必要に応じて使いこなし、その都度データを生む。データはツールごとに蓄積されていくが、他ツールからでも利用しやすい。

 DXのコンサルに依頼すると、ERP型のシステムを提案されることが多いという。確かに現在でもERP市場は成長を続けているが、鴨林氏は「明らかにアプリ連携型に移りつつある」と話す。特にERPを自社用にカスタマイズするのは問題で、他のサービスやツールとの連携できなくなってしまいかねない。

 鴨林氏は、建設DXにはアプリ連携型の自動化が大事とし、「業務視点で最適なシステムとBIMを統合し、そこから生み出されるデータをAIで活用するのが今の自然な流れ」と提言した。

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