清水建設は、不確定要素が多い設計の初期段階で、施設のデザイン検討と人流/音響の性能評価を同時に実行できるエンジニアリングツールを開発し、運用を開始した。
清水建設は2024年9月5日、設計者向けに、設計の初期段階で、各種施設のデザイン検討と人流/音響の性能評価を同時に実行できるシステム「Shimz DDE Pedex(ペデックス)」と「Shimz DDE Audix(オーディックス)」を開発し、運用を開始したと発表した。企画/基本設計のデジタルプラットフォーム「Shimz DDE」の新ツールとして設計者向けに提供する。
両システムは、人流や音響に影響を及ぼす可変要素を設定することで、それぞれの性能の適否を即時評価する。1日未満で数千パターンの膨大な組合せを総当たりして最適な案を選択可能だ。人流や音響の性能は多様なビジュアルでアウトプットし、専門知識がない人でも一目で認識できる。
Shimz DDE Pedexは、設計検討中の初期の3Dモデル中で数万人の群集行動を再現するシステム。従来の避難行動をベースにした評価と異なり、平常時の多様な行動を評価可能だ。例えば、数人のグループで入退場する来場者の待ち合わせや館内回遊行動などが、群集行動特性を反映した評価により可視化できる。ベクトル総研とアルゴリズムデザインラボの協力を得て開発した。
Shimz DDE Pedexでは、出入口や分岐点をノード(結節点)とし、ノードをつなぐ通路や廊下をリンクとして、対象空間をネットワークでモデル化。移動の目的や経路、歩行速度、扉の位置や数、サイズ、廊下の幅や長さなどを入力パラメータとして入退場時間や滞留人数を計算する。信頼性については、人流解析を専門とする東京都市大学 都市生活学部 都市生活学科教授 高柳英明氏から高い評価を得た。
Shimz DDE Audixは、コンサートホールや劇場など多くの人が集う空間の音響性能を評価/可視化する。対象空間の壁や床、天井などの仕上げ面の3Dモデルをベースに、ステージ上の音源位置から放射された音が反射を繰り返しながら伝わる軌跡を追跡し、空間内の音の伝搬を予測する。
歌声などがステージ上から個々の聴衆に明瞭に届くか否かを確認する指標「初期反射音分布」を数値化することで、専門家以外でも評価可能になる。空間形状の検討に加え、用途にふさわしい残響時間や音声明瞭度、音圧分布などの音響評価指標の設定や、指標を満足する構造材の形状と材質(吸音性能)の検討を繰り返し、施設デザインの最適化につなげる。
今後は両システムを活用してストレスが少ないスムーズな人流、心地よい音響を備えた施設を設計の上流段階から追求し、設計提案力の高度化を図る。
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