清水建設イノベーション拠点で外部調達の水素を活用したエネルギー実証開始：脱炭素

清水建設は、東京都江東区の自社イノベーション拠点「温故創新の森『NOVARE』」で、水素サプライチェーンを活用した水素エネルギーの実証運用を開始した。オンサイト型の水素蓄エネルギー設備「Hydro Q-BiC」に外部調達水素の急速充填用水素吸蔵合金タンクを付加し、オンサイトとオフサイトの双方から水素供給に対応できる新システムを実装した。

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　清水建設は2024年9月4日、東京都江東区の自社イノベーション拠点「温故創新の森『NOVARE』」で、水素サプライチェーンを活用した水素エネルギーの実証運用を開始したと発表した。

　オンサイト型の水素蓄エネルギー設備「Hydro Q-BiC」に外部調達水素の急速充填用水素吸蔵合金タンクを付加し、オンサイトとオフサイトの双方から水素供給に対応できる新システム「Hydro Q-BiC TriCE」をNOVAREに実装した。2024年度は、山梨県米倉山のグリーン水素製造サイトから年間40GJ（ギガジュール）の水素ガスを搬入する。

　受け入れた水素は、Hydro Q-BiC TriCEの水素吸蔵合金タンクに貯蔵。必要に応じて取り出し、NOVAREを構成する施設4棟の電力エネルギー源に利用することで、消費エネルギーの脱炭素化を促進する。

「Hydro Q-BiC TriCE」による水素エネルギー利用イメージ　出典：清水建設プレスリリース

　Hydro Q-BiCは、清水建設と産業技術総合研究所が共同開発したオンサイト型の水素蓄エネルギー設備だ。太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造し、常温／低圧で水素の吸蔵と放出が可能な水素吸蔵合金を内蔵したタンクに貯蔵する。水素吸蔵合金は、非危険物として使用できるため、一般施設にも展開が容易だ。

　Hydro Q-BiCはこれまで、再生可能エネルギー設備の設置面積の制約により、蓄エネルギーに利用できる水素の量に制約があった。そこで清水建設と産総研は、外部から搬入した水素を短時間で取り込める急速充填用水素吸蔵合金タンクを新たに開発し、Hydro Q-BiC TriCEを構築した。

　NOVAREに設置したHydro Q-BiC TriCEの水素貯蔵設備は、容量200ノルマルリューベの標準型タンクと容量250ノルマルリューベの急速充填型タンクから成る。急速充填型タンクには反応性の高い除熱機構を組み込み、熱媒がタンク内の合金を冷却することで水素吸蔵を促進する。外部からの水素輸送には水素カードル車を利用し、1回あたり最大250ノルマルリューベの水素を受け入れる。カードル車の入場から退場までの所要時間は2時間以内を想定している。

水素カードル車（左）、水素吸蔵合金タンク（右）　出典：清水建設プレスリリース

　清水建設では、脱炭素社会のエネルギー利用の在り方として、複数施設をネットワーク化して都市全体でゼロエネルギーの実現を目指す「ネットゼロエネルギーソサエティー（ZES）」を掲げる。NOVAREでは将来、オンサイト製造とオフサイト供給を合わせ、年間累計910GJの水素を貯蔵してZESを実現する計画だ。