RTK-GNSSの利用には、アンテナやGNSS受信機、モバイル回線が必要となるが、Mobile GNSSは超小型の端末に全て内蔵しているため、持ち歩くだけで高精度の位置情報が得られる。専用の超小型端末「MTRTK3」はマイクロテクノロジーの技術協力を得て、重さ約86グラムと75×42×24ミリのコンパクト化を実現し、作業員のヘルメットに装着しても負担にならない。
RTK-GNSSで測位する際は位置の補正に使う基準点が重要となるが、Mobile GNSSではユーザー自身が特別意識する必要はない。Mobile GNSSで使うdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスの基準点は、国土地理院が公開する電子基準点(約1300ポイント)に、NTTドコモが独自に管理する基準点を加えて日本全国をカバーしている。ユーザーは場所の制限を受けずにMobile GNSSのサービスが利用できる。
ちなみに、docomo IoT高精度GNSS位置情報サービスで補正データや観測情報の送受信には、インターネット回線のHTTPをベースとするTCPプロトコル「Ntrip(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol:エヌトリップ)」を採用。Ntripに対応した環境であれば、ICT建機をはじめ、ドローンやレーザーの測量、自律走行ロボットなどにもRTK-GNSSの位置情報が使える。
今展では、Mobile GNSSのRTK-GNSS測位技術の基盤となっているdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスの具体的な活用例を多数紹介。グレートスター ジャパンが販売するデンマークのTinyMobileRobots製マーキングロボット「TinySurveyor Plotter(タイニーサーベイヤー プロッター)」やチュウブ製のワイヤレスロボット芝刈り機「M1S(エムワンエス)」は、どちらもdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスで取得した正確な位置情報を用い、自己位置を把握して正確な作業を行う。
TinySurveyor Plotterは、危険を察知すると停止する超音波センサーで道路舗装工事前のプレマーキングを自動化する。機体上部にGNSSアンテナを搭載し、1〜2センチの精度で道路にポイントやラインを描く。塗料は後部に市販のスプレー缶を取り付け、稼働時間は着脱式バッテリーで最長8時間動く。
M1Sは、4GとRTK-GNSSで約2センチの誤差範囲で芝を刈るロボット。多くの市販ロボットは、ランダムに芝を刈るものが多いが、M1Sは規則的なストライプやゼブラカットを行う。リチウムイオンバッテリーで最大5時間稼働し、2台で約8000平方メートルを作業範囲とする。独自のAIアルゴリズムも備え、作業効率を自動計算し、一度作成した作業領域はクラウド上に保存されるため、次の作業時はロボットを置いてスタートボタンを押すだけで同じルートをなぞる。
移動しながら作業するロボットは、従来のようなGNSS(GPS)だけの誤差の多い位置情報ではコントロールが難しかった。今回披露した2台のロボットは、位置情報のズレがセンチ単位に収まるRTK-GNSSが、現場の自動化にも貢献することを間接的に示している。
NTTコミュニケーションズのブースでは、他にも地下の導管を見える化する「導管点検ソリューション」や位置情報を起点に現場情報を分析するソリューションなど、正確な位置情報が作業効率や施工品質に直結するソリューションを紹介した。
今後も、こうしたセンチ単位の正確な測位技術がなければ実現できなかった新たなソリューションが登場する可能性がある。その意味で、今回のNTTコミュニケーションズの展示は可能性を感じさせるものだった。
【訂正】記事の初出時に、位置情報を補正するサービスも「Mobile GNSS」としていましたが、厳密にはNTTドコモの「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」を活用しているとの指摘があったため、該当箇所を加筆修正しています(2024年9月6日12時41分)。
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