JR西日本は、人による直感的な操作が可能なロボットを搭載した重機を鉄道設備メンテナンスに導入する。当面は、架線支持物の塗装や支障樹木伐採に使用する予定だ。
先端ロボット制御工学技術をコアに人型重機の社会実装を目指す人機一体は2024年7月9日、ロボット搭載の重機「多機能鉄道重機」が同年7月から、JR西日本の営業線で鉄道設備メンテナンスに導入されると発表した。
多機能鉄道重機は、人機一体、JR西日本、日本信号が共同開発した高所重作業ロボットのPoC試作機「零式人機 ver.2.0」をベースに開発。「力制御・トルク制御技術」や「パワー増幅バイラテラル制御技術」といった人機一体独自の先端ロボット工学技術を採用するとともに、試作機に用いた人機一体の特許技術などのライセンスを日本信号に提供することで製品化した。
零式人機 ver.2.0と同様に、ブーム先端に人型重機を取り付け、安全な場所の操縦席から人型重機を遠隔操作し、危険な高所に登ることなく高所重作業を行なえる。
零式人機 ver.2.0は、滋賀県草津市内のJR西日本の草津訓練線などで、実証試験を複数回繰り返し、多様な作業を汎用的に行なえることを実証。製品版も、草津訓練線などでの実用試験を実施し、人機一体の本拠地がある滋賀県草津市から実用化のスタートを切ることとなった。
機器構成は、人型重機(ロボット)とブーム、操縦室、鉄道工事用車両で構成。遠隔操作で最大40キロの重量物を持ち、12メートルまでの高所作業に対応し、作業者はVRゴーグルで、ロボット目線で直感的な作業が行える。ロボットには、伐採や塗装といったさまざまな用途に特化したツールを装備できる。
JR西日本は、鉄道インフラメンテナンスでの高所重作業の解消に向けた第一歩とし、当面は架線支持物の塗装や支障樹木伐採に使用する。
これまでJR西日本は、技能者の確保や生産性の向上に課題に対し、グループの中期経営計画2022で「システムのメンテナンスチェンジ」を掲げ、新しい技術の導入に積極的に取り組んできた。その中で人機一体のロボット工学技術に注目し、高所重作業で汎用的に使えるロボットの実装について議論した結果、多機能鉄道重機の開発を始めるに至ったという。
人機一体は、高所重作業の機械化で、電力分野では東北電力ネットワークと、土木分野では竹中土木と共同開発を進めており、今後はそれぞれ実証試験をしていく予定だ。
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