「建機自動化」による変革、安全性と生産性の劇的向上がもたらす価値【DeepX解説】建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(9)(1/2 ページ)

建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。今回は、建機の自動化という世界的にも前例が少ない領域に挑むDeepXが、本技術が建設業界の構造的な課題解決にもたらす価値について、具体的な技術アプローチを交えて解説します。

» 2026年03月09日 10時00分 公開

デジタル技術の活用は「必須条件」

 人手不足、災害の激甚化、インフラ老朽化という差し迫った課題を抱える建設業界にとって、デジタル技術の活用は業界存続の必須条件です。国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」は、建設現場の生産性向上や省人化を目指し、2040年度までに生産性1.5倍を目標に定めています。その本質は、技能者の経験などに依存した施工を、標準化されたデジタルプロセスと自動機械に置き換えることにあり、法制度、業界慣行、技術基盤など広範な構造改革が求められます。

建機自動化の難しさと可能性

 中でも、建設機械の自動化は特に難易度の高い分野です。技術的な側面では、変化する非定型な作業環境への対応、センサー情報の不安定性やリアルタイム処理にかかる高い負荷、さらには現場ごとに異なるタスクへの対処などがハードルとなっています。そのため、建機の自動化は世界的にも前例が少なく、デモンストレーションから実運用への移行には高い壁が存在します。

 しかし、実現すれば、安全性向上、生産プロセスの全体最適化、人件費などのコスト削減など、計り知れない効果をもたらすとともに、建設産業の構造を根底から変革する可能性すら秘めています。

DeepXが挑む建機自動化の最前線:技術的アプローチと取り組み例

 建機の自動運転ソフトウェア技術を手掛けるロボティクス/AIスタートアップのDeepXは、まさにこの分野に挑戦しており、社会実装に向けた具体的な成果も生み出し始めています。ここでは、その技術的アプローチと取り組み例を紹介します。

 DeepXの自動化技術の鍵は、建設現場特有の課題を克服するための多角的なアプローチにあります。

 まず、位置や姿勢、土形状などの条件が刻々と変化する非定型な作業環境に対しては、AIを用いた高度な認識アルゴリズムを開発し、現場状況を詳細に把握することで、変化に応じた適切な制御を可能にしています。

 次に、現場におけるセンサー情報の不安定性やリアルタイム処理の負荷については、適切なハードウェア選定に加え、オープンソースのロボットオペレーティングシステム「ROS 2(Robot Operating System 2)」を基盤とした堅牢(けんろう)なデータ通信を構築することで、システムの安定性と高い処理能力を両立させています。

適切な機器や通信環境を準備して搭載(IMU:慣性計測装置、GNSS:全球測位衛星システム、PLC:制御装置用コンピュータ、LiDAR:レーザー光の反射光により対象物の形や距離を計測する手法) 適切な機器や通信環境を準備して搭載(IMU:慣性計測装置、GNSS:全球測位衛星システム、PLC:制御装置用コンピュータ、LiDAR:レーザー光の反射光により対象物の形や距離を計測する手法) 提供:DeepX

 さらに、現場ごとの異なるタスクに対応するため、自動運転システムに必要な機能をソフトウェアモジュールとして切り分け、ROS 2によって統合することで、汎用性の高い制御モデルを構築しています。加えて、特定のメーカーや機種に限定された個別システムではなく、さまざまな建機に適用/統合できることを目指すなど、複数メーカーの機械が稼働する現場での実装を見据えている点も、DeepXのアプローチの大きな特徴です。

異なるタスクごとに必要な機能をソフトウェアモジュールとして切り分け、ROS 2により統合 異なるタスクごとに必要な機能をソフトウェアモジュールとして切り分け、ROS 2により統合 提供:DeepX
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