戸田建設は、トンネルを掘削するシールド機後方に取り付けた油圧ジャッキの圧力を個々に自動調節し、姿勢を制御する新たなシステム「Best Fit Jack」を開発した。実証の結果、システム上のAIが伝送した指示に合わせ、油圧ジャッキの制御とシールド機の自動運転を支障なく行い、現場での実用性が証明された。
戸田建設は2024年4月23日、トンネルを掘削するシールド機の自動運転制御技術を高精度化し、シールド機後方に取り付けた油圧ジャッキの圧力を個々に自動調節して姿勢を制御する新たなシステム「Best Fit Jack」を開発したと発表した。戸田建設のAIシステム「Transform Shield」や、自動連続測量システムと連携して、シールド機の掘進方向や傾きを制御する。
新システムは、既に戸田建設のシールド工事の現場で実証を行い、AIシステムの指示に従って油圧ジャッキとシールド機の自動運転を支障なく実行し、システムの実用性を確認した。また、自社でシステム開発したことで、類似する既往技術と比較して導入コストが安価で済む。
新システムは、自動連続測量システムにより掘進中のシールド機の情報をリアルタイムに把握し、AIが過去のデータを基に最適な指示値(掘進方向や姿勢)を算出する。指示値を受信したシステムは、各油圧ジャッキの圧力を自動で調節し、トンネルの計画線からの離れ(誤差)を常に最小に抑える理想的な掘進を実現する。自動化により経験の浅いオペレーターでも安定した線形管理を行えるため、人為的なミスが防止できる。
また、全ての油圧ジャッキを使用した総合圧力制御を行うため、セグメントへの負荷を分散してトンネル構造物の品質が向上する。計画路線から離れてしまった場合も、AIシステムが掘進中のシールド機を理想の路線に緩やかに近づける自動調節を行い、周辺地盤への影響やセグメントへの負担を軽減する。
戸田建設は今後、新システムを使用して自動で高精度な掘進管理技術を確立し、外販も視野に積極的な展開を進める。将来はAIシステムを活用してさまざまな要素技術の情報を統合し、シールド工事の施工の完全自動化を目指す。
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