建物の高品質化・高性能化に寄与するBIMの構築では、今までの取り組みで、意匠・構造・設備で、BIMの標準ソフトをAutodesk Revitに一本化し、共通データ環境は「BIM 360」のクラウド環境で一貫して情報共有する体制を整えた。次の段階では、設備のうち標準化が遅れている電気を含めて、意匠・構造・設備の連携をさらに深め、合理的なBIMプロセスを構築し、BIMに適した図面表現の完成を目標に据える。
設計BIMの浸透では、実施設計の成果図書をBIMで作成した案件も徐々に増えるとともに、超高層や大型案件でも基本設計を中心に活用が進んでいるという。しかし、まだ無理にBIM連携している部分があり、非効率となっている社内の設計ワークフローを見直す。
また、2021年9月に運用を開始し、現時点で2件の導入実績があるBIMと省エネ適合判定を行うWebプログラムの連携は、Autodesk Insightなどのエネルギーシミュレーションにも範囲を拡大。「LCCO2」(建物寿命1年あたりのCO2排出量評価)や建築時のCO2排出量計算をはじめ、エネルギー効率や環境最適化に配慮したBIMを使用したデザイン検討に役立てていく。
一方、グレスパン氏は、両社が関心のある“ネットゼロ”の建物に関して「当社はカーボンミッションを既に達成しており、SDGsの省エネや環境配慮で知見を与えられるため、日本設計とは次のフェーズのパートナーシップに移行していければ」とコメント。
3番目のDX及びビッグデータ活用で、篠崎氏は「BIMの標準化を推進してきたことで、建物データベースの骨格を整備することができ、ビッグデータ活用の基盤が整いつつある。その一環で、BIMとリンクする“設計データベース”を整備し、コスト概算システムや仕様書と連携させていく。同時に全社で取り組む、次世代デジタル基盤構想に向けて、さまざまな部門や外部組織とのコラボレーションを促進し、創造力と品質力を強化し、さらなる価値を提供する」と述べた。
「Autodeskはブランドロゴを2021年9月に刷新し、建築物のライフサイクル全体を通して効率化する“プラットフォームカンパニー”を目標に定めた。建築には大量のデータが発生するため、建設生産プロセスの非効率化や遅延を招いている。仮にアプリからシームレス膨大データへ容易にアクセスできるようになれば、コストや建築時に発生するCO2の削減を設計段階から考慮することが可能になるはず。将来はワークフローの改善で、いまは分断されているデータが一元化され、新たなサービス創出をもたらす、業界全体のコンバージェンスが起きることを期待したい」(グレスパン氏)。
また、国交省が主導する3D都市モデルのオープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」についても、オープンソースの都市モデルデータとの親和性を高め、さまざまな利活用につなげていく。
BIM:大林組がBIM国際規格「ISO 19650」の認証取得、大手ゼネコン初の目的と意義を探る
ドローン:鹿島建設がトンネルや地下の“非GNSS環境下”で自律飛行を可能にするドローン開発
“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(6):【第6回】GISや点群などAI発展のカギ“データ利活用”、インフラ維持修繕のデジタルツイン
BIM×AR/MR:mixpaceに「BIM 360」との連携機能、大容量BIMモデルでもそのままAR変換
BIM確認申請:BIMビュワーアプリ「BIMx」がなぜ建築確認申請に有効なのか?実践的なワークフロー解説
産業動向:構造計画研究所が木製パネル耐震壁「CLT市松ブロック壁」を開発、子ども園に導入
産業動向:大林組が遠隔操作も可能な「クレーン自律運転システム」を開発、多様なクレーンに対応Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10