第6回 ジャパンビルド−建築の先端技術展− 特集
連載
» 2021年10月28日 10時00分 公開

【第6回】GISや点群などAI発展のカギ“データ利活用”、インフラ維持修繕のデジタルツイン“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(6)(1/2 ページ)

ここ数年、国が旗振り役となって推進しているi-Constructionの進捗により、土木分野でのAI活用が進んでいる。本連載では、「土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会」で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIをどのように使いこなしていくかの観点から、AIと土木の現状や課題、その先の将来ビジョンについて考えていきます。連載第6回は、AI発展のカギとなる多種多様なデータ活用の在り方を、首都高や阪神高速などの各種事例をもとに解説していきます。

[阿部雅人(土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長),BUILT]

 AIの発展には“データ利活用”がカギになります。国土交通省は、インフラに関わる官民の多様なデータを連携させた「国土交通データプラットフォーム」※1の構築を進めています。また、静岡県では、3次元点群データを公開して、多様な用途への利活用を推進しています※2。このような「オープンデータ化」が、AIの発展を後押ししています。

※1 国土交通データプラットフォーム:国土交通省が構築を進める3次元データ視覚化機能、データハブ機能、情報発信機能を有するプラットフォーム

※2 Shizuoka Point Cloud DB:静岡県 交通基盤部 政策管理局 建設政策課が運営する全国初の3次元点群データのオープンデータサイトPCDB(Point Cloud Data Base)

 データの共有にあたって、重要なコンセプトが「プラットフォーム」です。下図左は、従来のデータ整備方法で、具体的な応用ごとに必要なデータを取得して利用するというものです。一方で、いろいろな目的で取得されたデータを共有して、当初想定された以外の応用にも利用していこうとするのが下図右のプラットフォームの考え方です。一例として、交通渋滞の状況を確認するために設置された道路沿線のカメラを、気象・天候や路面状態の把握に用いることが想定されます。また、携帯電話端末の位置情報データを利用して、交通や人流を分析するといった取り組みもみられます。

 しかし、具体的な応用に適したデータを取得するには、対象や応用に関する高度な専門知が必要で、手間や費用が掛かります。そこで、プラットフォームによって各種のデータを共有して多目的に利用していくことで、データ取得のコストや参入障壁が下がり、ユースケースや市場の拡大につながるメリットが期待されます。買い物に例えれば、従来は欲しいものがあったら、ひとつひとつの商品を取り扱っている専門店を探して買いに行かなければならなかったですが、プラットフォームというショッピングモールや百貨店に似たものができることで、いろいろなものを一か所で揃(そろ)えることができるというイメージです。

従来型とプラットフォーム型データと応用の関係 筆者作成

 道路や上下水道のような社会インフラは、ネットワーク状に広がっていますし、また、地域に及ぼす影響が大きいので、多様なデータを表示する基盤として、地図データや地理情報システム(GIS)がよく用いられます。

 2019年に発生した台風15号の千葉県南部地域での被害状況に関する異種情報を統合することで災害被害を調査した論文「異種情報源の統合による令和元年千葉県激甚災害の被害状況の可視化」※3では、台風通過時の気象データと、地方自治体や高速道路会社、電力会社、テレビ局などに分散している多種多様な被害情報を集約し、可視化しています。下図は、千葉県南部を中心に、台風の進路と、高速道路の被害情報の報告件数を時系列的にヒートマップで表した図版です。個別の報道や被害情報だけでは分かりにくい、地理的・時間的な相関関係や全体像を俯瞰することができます。

2019年台風15号通過時の千葉県南部での高速道路被害情報の可視化 出典:※3

※3 出典:大枝真一,稲毛惇人,篠田拓樹,飯棲俊介,宮島亜希子共著「異種情報源の統合による令和元年千葉県激甚災害の被害状況の可視化」AI・データサイエンス論文集1巻J1号p286〜294/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2020年

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.