鹿島建設は、これまでドローンの自律飛行が困難とされていた屋内や地下空間などの非GNSS環境下で、LiDAR SLAM技術とVisual SLAM技術を併用することで自律飛行が可能なドローンを開発した。2020年11月には、トンネル工事現場に適用し、ドローンによる無人の点検作業を成功させている。
鹿島建設は2021年10月20日、非GNSS環境下かつ暗所でも自律飛行が可能なドローンを開発し、国内で初めて実用化したと発表した。新型ドローンは、レーザー光で距離を測るLiDARを用いて飛行体の自律制御技術を開発している米NEAR EARTH AUTONOMYの非GNSS環境下での飛行システム「Topaz」を採用し、各種実証を踏まえてカスタマイズして搭載している。
トンネルや都市部での地下構造体の建設工事は、工事区間が長くや移動時に昇降も要するため、現場社員の各種点検作業が長時間に及ぶことがあり、生産性の向上を阻害する要因となっている。また、トンネル内や地下空間は暗く狭い場所が多く、点検作業を無人化することは安全性の確保にもつながると期待されている。
近年は、ドローン技術の飛躍的な進歩により、建設業でも空撮や測量などの分野でドローンの導入が進んでいるが、飛行にはGNSSに依存しており、屋内や地下空間といったGNSS信号を受信できない環境下では、自動飛行や自律飛行が困難とされていた。
今回導入したNEAR EARTH AUTONOMYが開発したTopazは、レーザー距離計で自己位置の推定と環境地図の作成を同時に行うLiDAR SLAM技術を主軸に、カメラ画像から読み取るVisual SLAM技術も併用することで、安定性や安全性、操作性を高めた高性能なシステム。
現場適用は2019年12月、トンネル工事現場2カ所と建築工事現場1カ所を対象にTopazを搭載したドローンで実証実験を行い、非GNSS環境下でも安定した自律飛行が可能なことを確認した。その後、実験結果をもとに、独自のアルゴリズムを構築し、トンネルのような狭い暗所や地下工事のような障害物が存在する空間でも、飛行安定性を確保する機能を新たに実装した。
さらにシステムには、計画した飛行経路で自律飛行の可否を事前に確認する点群データを活用したシミュレーターも備わっているため、あらゆる環境下での自律飛行をより安全に運用できる。
鹿島建設では、2020年11月から国内のトンネル工事現場で、無人坑内点検(壁面の異常や漏水、ガス漏れなどの調査)を既に進めている。今後は、トンネル工事現場や都市部の地下工事現場などの非GNSS環境下で、NEAR EARTH AUTONOMYとの協業により、現場調査や点検業務にシステムを搭載したドローンを積極的に適用していく。
また、取得した点群データとBIM/CIMデータを重ね合わせ、工事進捗の見える化や施工管理の効率化にもつなげる。将来は、非GNSS環境下を含む全ての建設現場で、調査・点検業務の自動化を目指すとしている。
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