コロナ禍で新築と中古の住宅市場は低迷するも、リフォームのニーズは増加:住宅ビジネスフェア2020(2/2 ページ)
セミナーの後半では、新築と中古住宅市場の将来像や物件の長寿命化における課題について中山氏は言及した。新築住宅市場は、各都市圏の中で、交通と生活の利便性やロケーションが良好なエリアに、構造やデザインなどで優れた新築物件の供給が続くという。
「住宅の構造に関して、総務省のデータによれば、1970年代は全体のうち、80%以上を木造住宅が占めていたが、近年、騒音や災害に強いRC/SRC造の住宅が増え、2018年にはRC/SRC造の割合が全体の43.1%となった」(中山氏)。
総務省統計局が発表した住宅の構造別シェア推移
中古住宅市場の将来像について、中山氏は、「新築は新しくて快適で、中古は古くて不便という固定観念がリフォームの定着で払拭され、立地優先で物件を選ぶケースがさらに増えていく」と展望を示した。
長寿命化の課題に関して、中山氏は、「住宅の耐用年数は、木造住宅が20〜22年で、RC造/SRC造のマンションは47年と規定されていることから、土地の価値に比べて、建物の価値が減りやすい仕組みになっている。そのため、スクラップ&ビルドで物件の価値を再生するという商習慣が残っており、住宅の長寿命化を阻害している。また、住宅の長寿命化を実現するためには、新築時だけでなく、リフォーム時でも建物の長寿命化を促進する資材と建築工法の開発が急務で、資材や工法によって、建物の耐用年数を個別に決める手法も必要だ」と警鐘を鳴らした。
続けて、「中古住宅が流通する際に、築年数や駅からの所要時間、立地条件、周辺環境などの利便性と効率性が重視され、建物の耐久性や寿命、これまでの維持管理状況を客観的に評価し、売却時の価格に反映する仕組みがないことも、住宅の長寿命化が国内で浸透しない原因になっている。さらに、建物状況調査(インスペクション)と瑕疵(かし)保険の普及率が低いことも住宅の長寿命化が広がらない要因だ。建物の売却時に、インスペクションによる現況確認とユーザーの瑕疵保険加入を実現することで、住宅販売後のトラブルを回避でき、建物の価値を下げずに所有権を移行可能だ。また、中古マンションの場合は、専有部だけでなく、共有部の管理情報を管理組合が開示する必要がある。管理組合が、建物全体の維持管理が資産価値に反映されることを認識し、日常的に専有部をメンテナンスすることで、マンションの長寿命化につながる」と補足した。
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