大林組は建物を「作って終わり」ではなく「育てる」ことが重要とする考え方に基づき、スマートビルプラットフォーム「WELCS place」を展開する。実証拠点「Port Plus 大林組横浜研修所」ではWELCS placeを核に顔認証の入退館管理や設備データの可視化などアプリケーション開発にも取り組んでいる。その先には、蓄積データを基にした生成AI活用も視野に入れ、建物の継続的な高度化を目指す。
大林組は「第10回 JAPAN BUILD TOKYO−建築・土木・不動産の先端技術展−」(会期:2025年12月10〜12日、東京ビッグサイト)の構成展「第10回 スマートビルディングEXPO」で、スマートビルプラットフォーム「WELCS place(ウェルクス プレイス)」や神奈川県横浜市の研修施設「Port Plus 大林組横浜研修所」での事例を紹介した。
不動産価値の維持/向上を図るために、オフィスビルのデジタル化は重要な要素の1つとされる。デジタル技術を取り入れて建物をスマート化することで、例えば会議室の予約時刻が近づくと、予約システムが持つ情報を基に、会議室の空調や照明を自動でオンにするといった運用が可能になる。
今回の展示では、スマートビルを「実現」するフェーズから「進化/継続」させるフェーズにテーマを移行した。
大林組はスマートビルを「高度なデジタル化に迅速かつ安全に対応し、常に最適なデジタル環境を提供し続ける建物」と定義。建物を「作って終わり」ではなく「育てる」という考え方の基、運用段階におけるデータ収集と可視化、評価、改善計画、システム更新までを含めたサイクルを重視しながらビルの最適化を支援する。
従来の建物では、電気、空調、セキュリティ、各種管理システムなどが独立して構築されており、システム間の連携は容易ではなかった。
WELCS placeは、複数のアプリケーションをデータ連携し、同一のユーザーインターフェイス上で稼働できるスマートビルプラットフォームだ。建物内のネットワークを統合し、設備やセンサー、各種デバイスを共通基盤に接続することで、アプリケーションや機器の追加/入れ替えがスムーズに行える。新たなシステムを追加する際もインフラ整備の手間を最小化できる。また、建物内で発生する各種データを集約し、外部サービスと連携して2次活用することで、ビル運用の高度化につなげられる。
スマートビル推進において、大林組はMaster System Integrator(MSI)として、建築/設備からICTまでの幅広い知見を横断的に活用。計画段階のコンサルティングから設計/構築までを一体的に支援し、情報エンジニアリング部が中心となって全体をリードする。運用段階では大林組と日立ソリューションズと設立した合弁会社オプライゾンが運用MSIとして、運用/保守/更新を一貫して担う。構築と運用の両面から、スマートビルのライフサイクル全体をカバーする体制を整えている。
大林組はゼネコンとしての建築の知見に加え、多様なサービスやソリューションを比較し、最適な組み合わせを設計できる点を強みとして挙げる。
WELCS placeの実証拠点として位置付けるのが、2022年に竣工したPort Plus 大林組横浜研修所だ。顔認証による入退館管理の他、宿泊室内のタブレットによる空調や照明の制御、睡眠センサーを用いた睡眠状態の可視化などの実証を行っている。エネルギー使用量やトイレ使用状況といった設備情報をサイネージに表示し、建物の運用状況を利用者にも共有している。スマートビルの実証の場として、実運用を通じた検証を重ねている。
今後は生成AIの活用も視野に入れ、蓄積したデータを基にAIが自律的に解析し、設備制御や最適化を提案するAIを搭載したスマートビルの社会実装を目指す。アプリケーション拡充と用途拡大とあわせ、WELCS placeは進化を続ける方針だ。スマート化する建物はオフィスビルに限らない。生産施設、ホテル、スタジアム、アリーナ、病院など、多様な用途への展開を見据える。
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