林野庁では、民間建築物の木造化を拡大する目的で、2018年から「民間建築物などにおける木材利用促進に向けた懇談会(ウッド・チェンジ・ネットワーク)」を開催。懇談会の成果として、木材利用の意義を理解したセブン‐イレブン・ジャパンや日本マクドナルドホールディングスが木造店舗の開発に乗り出している。
林野庁 林政部 木材利用課長 長野麻子氏は、住宅の設計・施工や修繕、管理に役立つソリューションが一堂に会した専門展「住宅ビジネスフェア2020」(会期:2020年9月24〜25日、東京ビッグサイト)で、「これからの木材利用〜みんなでウッド・チェンジ〜」と題した講演を行った。セッションでは、国内での木材利用の動向について解説した。
日本は国土の7割が森林で、冷温帯林や亜熱帯林、亜寒帯林、暖温帯林など多様な植生を形成している。林野庁が発表した資料「森林食源の現況」によれば、2017年の森林蓄積は52億立方メートルで、1966年の値と比較して2.7倍以上増加しており、人工林は5倍以上増えている。現在、人工林の約半数が樹齢51〜55年の主伐期を迎えつつある。
「人工林は、主伐期を迎えた木の伐採と植林を繰り返すことで、生態系のバランスが取れるため、主伐期の木を有効活用していくことが重要だ」(長野氏)。
木材の供給量は、住宅着工戸数の減少を背景に需要が減っているため、長期的には縮減傾向にあるものの、近年は回復しつつある。うち、木材輸入量は1996年をピークに低減しているが、国産材の供給量は、2002年を底に増え続けている。木材自給率も、2002年の18.8%で下げ止まり、その後、継続的に上昇し、2018年は8年連続のアップで36.6%となり30年前の水準に達した。
国内での木材利用について、長野氏は、「公共建築物など木材利用促進法の施行以降、木材活用の公的意義が国内外で認知されるとともに、木材使用の拡大に向けた制度面の整備が進展している。しかし、木材の利用を飛躍的に伸ばすためには、多様な制度を生かして、公共建築物の木造率を上げることや非住宅分野での木材利用などが活発化していく必要がある」と現況を語った。
続けて、「今後、人口減少に伴い新築の住宅着工数は一層減っていくことが見込まれる。国産材の使用率を維持するためには、低層住宅の使用木材を外材から国産材に切り替えることと、中高層住宅や非住宅の建築物での国産材活用を促進していかなければならない」と補足した。
公共建築物など木材利用促進法の施行後における公共建築物の木造率推移について、国土交通省が公表した「建築着工統計調査 2018年度」のデータを基に林野庁が試算した結果、2013年度以降、公共建築物の木造率は上昇傾向にあると判明した。とくに、国の基本方針で、積極的に木造化を推進するとされている低層(3階建て以下)の公共建築物で、木造率の上昇は顕著で、2018年度には全体の26.5%を占めるまでに増加した。
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