LIFULL HOME'S総研は、コロナ禍における新築住宅と中古物件の市場動向を調査した。結果、新築と中古の住宅市場ともに、売上が低迷していることを明らかにした。一方、新型コロナウイルス感染症の影響で、住み替えしにくい状況から、居住性と機能性を向上する改修ニーズは高まっており、リフォームを検討するユーザーが増加していることも判明した。
LIFULLが運営するLIFULL HOME'S総研 副所長 チーフアナリスト 中山登志朗氏は、住宅の設計・施工や修繕、管理に役立つソリューションが展示された専門展「住宅ビジネスフェア2020」(会期:2020年9月24〜25日、東京ビッグサイト)で、「住宅は長寿命化できるのか 少子化&高齢化に加えて“WITHコロナ”で大きく変わる住宅市場の今後」と題した講演を行った。
セッションでは、新築住宅と中古物件の動向や住宅の長寿命化における課題について紹介した。
中山氏は「住宅業界では、2019年10月に政府が消費税を増税して以降、戸建て物件とマンションを問わず、新築住宅の売れ行きは急減していたが、国の住宅購入支援策により徐々に売上が回復していくという楽観的予測があった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、“住宅の買い時ではない”と考えるユーザーが増加し、新築住宅の売上が増えず、急激に縮小しており、2020年における新築の販売戸数は約1万5000戸になると見込まれている。値ごろ感のある中古住宅は、ユーザーからの問い合わせがコンスタントにあるものの、足元の生活不安や収入の先行きに対する懸念から購入に踏み切れない顧客が増え、成約件数は減少している。一方、住み替えしにくい状況から、居住性と機能性を向上する改修ニーズは高まっており、リフォームを検討するユーザーは増加している」と住宅市場の現状について語った。
新築住宅市場の動きについて、中山氏は、「消費増税で供給が激減していた新築のマンションと戸建て物件は、市場の動向が負えない状況だが、ディベロッパーやハウスメーカーなどが計画している建物の開発プロジェクト数は減少していないので、今後国の給付金や支援策次第で市場が活性化する可能性もある」と述べた。
また、LIFULLが2020年4〜8月に、賃貸住宅を利用するユーザーの不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」への問い合わせ件数を基に、新型コロナウイルス感染症の影響下で、どのエリアの検索数が増加しているかを調査した結果、千葉県や埼玉県、神奈川県の賃貸住宅を検索するユーザーが増えたことを明らかにした。
「これまで、賃貸住宅は交通と生活の利便性に優れた都心の物件が人気だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、首都圏の外れにあり、都心にアクセスしやすく、家賃が手ごろな物件をユーザーが探すようになった」(中山氏)。
住宅投資市場に関して、中山氏は、「ユーザーの投資物件購入と新規投資案件の開発は、現状、ほぼ皆無で、施主が違約金を払ってアパートの建設を中断するケースも発生している。また、REIT(不動産投資信託)の数値が急激に悪化しているため、物件に投資する際には収益性と将来性について注視しなければならない状況になっている。しかし、ワンルームマンションの建設は専業者が継続的に行い、老後の資金対策として販売攻勢を仕掛けている」とコメントした。
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