【独占取材】日立ビルシステム 光冨新社長「コロナ禍は戦略を見直す好機。ITの付加価値で差別化を」経営トップに聞く(3/3 ページ)

» 2020年09月07日 06時33分 公開
[石原忍BUILT]
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コロナ禍でタッチレスソリューションの提供開始

光冨社長 横ばいにある国内市場は、コスト構造改革を断行し、製品競争力の強化や昇降機とビルソリューションを複合させた提案の拡大、グループ内での連携によるスマートビル事業への挑戦をしていく。新型コロナウイルス感染症の拡大で、不要不急の工事は先送りになり、既存の設備を使い続けるために保守が重視されるようになるはず。いずれにしても、インキュベーションが必要な時機にあり、ITやIoTでビル設備に付加価値を付け、需要を喚起していかなくてはならない。

――日立ビルシステム社内での新型コロナウイルス対策

光冨社長 コロナ禍にあって、社外でのフィールド業務を行うのが困難な状況にありながら、当社の従業員は、基幹業務であるエレベーターやエスカレーターの保守・点検サービスを継続し、社会のライフラインを守るために日々奮闘してもらっている。フィールドエンジニアを守るため、マスクや消毒液をグローバルで調達して配布している他、働く環境の整備・改善を進めている。具体的には、ロケーションフリーの柔軟な働き方の実現に向けて、テレワーク環境を整えるとともに、紙やハンコ依存からの脱却やジョブ型の人材マネジメントへの移行に着手している。

 対外的には、社内に新型コロナウイルス対策の専任チームを組織し、非接触での日常生活を実現するビル・マンション向けタッチレスソリューションの提供を2020年4月に始め、6月にも第2弾を発表するなど順次メニューを拡充している。同時に、コロナ禍での要望を顧客に聞き取りながら、新しい技術・製品・サービスでの商談を進めている。これからは、1社だけでは限界があるため、ビルオーナーやマンション管理組合、または異業種と組み、互いにWin-Winとなる関係性を築く「Co-Creation(コ・クリエーション、協創)」の取り組みがキーワードになる。

――ニューノーマル時代のスマートビル実現を目指して

光冨社長 Co-Creationによる開発の方向性は、ニーズをくみ取ったEV/ESの次世代モデルは当然のこととして、IT事業部門など日立全社のリソースを用い、メンテナンスサービスのさらなるIT化、コネクテッドされたビル設備から集まってくるビッグデータを解析して故障予知などを行うAIのアルゴリズム構築、さらにタッチレスなど新技術のアジャイル開発などを進め、ビルやマンションの設備を最適化することで“スマートビル”を実現させていきたい。

 また、EV/ESは、世に登場してからかなりの年月を経ており、これからパラダイムシフトが起きにくい製品ではあるが、ITやIoTによるサービスを加えることで、ライフサイクル全般での関わりを強化していきたい。全国のどこかで、台風や地震といった自然災害が発生しても、対策本部をすぐに立ち上げ、全国各地の300拠点からフィールドエンジニアを急行させ、復旧にあたれる体制を敷いている。ライフラインを扱う企業として、顧客の信頼を得るために愚直に日々研さんを重ねていくことが何よりも重要だ。

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、別の見方をすると、事業戦略をリフレッシュする良い機会になったとも言い換えられる。従来の働き方とビジネスモデルを棚卸して再構築し、非接触などの新たな社会ニーズや顧客が直面している課題に素早く応じ、ニューノーマルに対応したスマートビルを実現する製品サービスを形にして、激しい市場競争に勝ち残っていかねばならない。

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