日立のビルシステム事業を統べる新社長に光冨眞哉氏が就任した。いまだ続くコロナ禍の副産物としてリモートワークやテレワークが急速に社会全体で普及したことで、オフィスビルやワークプレースなど働く空間そのものの価値観が変わる転換点に差し掛かっている。これまでとは全く異なる社会変革に、エレベーターやエスカレーターを主力とする同社のビルシステム事業がどのように応え、ニューノーマル時代で勝ち残っていくのか。新たな舵取りを担う、光冨新社長への独占インタビューから探った。
日立ビルシステムは、3カ年の中期経営計画の中間となる2020年度に経営トップが交代し、光冨眞哉氏が代表取締役 取締役社長に就任した。光冨氏は1982年、日立製作所に入社して以来、鉄道システム事業に長らく携わり、CSO(Chief Strategy Officer)や営業統括を歴任、2018年からは日立製作所の執行役常務を務めてきた。
これまで培ってきた知見をビルシステム事業に持ち込み、グローバルでの飛躍を果たすため、新型コロナウイルス感染症という歴史的な災厄がまん延する中で、どのような成長戦略を描くのか。エレベーター(EV)やエスカレーター(ES)を中心としたワールドワイドでの市況分析を交えつつ、光冨氏に聞いた。
――これまでの経歴について
光冨社長 日立製作所では入社以来、鉄道事業一筋に携わり、最初に受注したのは当時国鉄のゼロ系新幹線だった。その後、JR東日本、JR東海などの国内鉄道事業者をクライアントに、鉄道車両や信号製品を販売する営業を担当してきた。
転機となったのが2002年で、国内営業を離れ、英国市場への参入を担当することとなった。2005年の初受注を足掛かりに、2010年代には、866両の大規模PPP案件を落札するなど、英国の鉄道市場での地位を確立することに成功した。2014年には、鉄道事業の本拠をロンドンに移管することとなり、CSOに就任して現地に駐在。
ちょうどその頃、イタリアの鉄道車両メーカー・アンサルドブレダ(現・日立レール)と、信号システム大手・アンサルドSTS(現・日立レールSTS)の買収を進めており、交渉やPMI(Post Merger Integration)にも携わった。
2年を英国で過ごした後、2016年に帰国し、日本とアジア・パシフィックの鉄道事業を率いた。そして、2020年4月1日付で日立製作所 執行役常務/ビルシステムビジネスユニットCEO 兼 日立ビルシステム 取締役社長に就き、ビルシステム事業全体をとりまとめるポジションとなった。
――ビルシステム事業の概要とグローバル戦略
光冨社長 2019年度の業績を振り返ると、売上収益は5915億円で、中国の為替とCOVID-19の影響を受け、前年度比で301億円のマイナスとなった。しかし、原価低減で営業利益は578億円の黒字で前年度比38億円のプラス、営業利益率も9.8%で同比1.1%向上し、収益性は改善した。
現状、ビルシステム事業の内訳は、昇降機のリニューアル/保全サービス、ビル設備管理サービスなどの「ビルサービス」が46.1%に対し、EV/ESに動く歩道を含めたハードの製造・販売が53.9%。市場エリアは、日本が45.1%で、中国が49.6%と上回り、アジア・中東は5.3%とまだ規模は小さい。
総力特集:
経済産業省が主催する「産業サイバーセキュリティ研究会」のビルサブワーキンググループが、「ビルシステムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン第1版」を2019年6月に公開した。
なぜ今、ビルシステムのセキュリティが重要とされるのか?ビルシステムを取り巻く最新製品・サービスや市場トレンドなどから、現状の課題を浮き彫りにし、次のSociety 5.0時代にあるべきスマートビルの姿を探る。
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