建設業と通信業、それぞれの現場を支える女性たちが集まり、働く環境や制度の“使いやすさ”を互いに語らう場が開かれた。奥村組とNTTフィールドテクノの女性社員が参加し、冷却ベストや作業靴といった支給品の工夫から、生理休暇の取りづらさまで現場の「リアル」を忌憚ない声で共有した。制度そのものよりも、「どう使えるか」「周囲の理解があるか」が鍵という気付きが、共通課題として浮かび上がった。
NTT西日本グループのNTTフィールドテクノ(NTT-FT)と奥村組は2025年6月16日、大阪市のNTT西日本研修センタで合同の意見交換会を開催した。会の前半では、両社が女性活躍推進の取り組みをそれぞれ報告。本稿でレポートする後半では、各社の代表者へのインタビューと女性社員同士のグループディスカッションの機会を設けた。
奥村組からは、ダイバーシティー推進部の島本恵梨子氏と三木あすか氏が登壇。女性技術者の現場定着に向けた実感と課題、そして今後の展望について語った。
三木氏は、「昔に比べて、現場に女性がいるのが当たり前になってきた。かつては女性トイレを設置するかどうかすら議論の対象だったが、今は必要設備として自然に認識されている」と変化を語る。一方で、長く働き続けるための制度の周知と活用支援の必要性にも言及し、「制度はあるのに周知されていなかったり、使いづらい雰囲気があったりしては意味がない」と指摘した。
島本氏は「上司世代の意識も大きく変わってきている。最近は『この制度って使っていいの?』と男性社員からも聞かれることが増えた」と、職場全体の意識変化にも触れた。その上で、「職場の理解や空気を変えるには、まず知ってもらうことが大事だ。女性はこう感じていると声に出すことがスタートになる。一過性の対応ではなく、標準化を進めるべき。男女問わず、全ての作業員にとって快適な環境を整えることが結果的には、会社全体の力になる」と提言した。
NTTフィールドテクノ 熊本設備部の川添杏奈氏は、女性視点で業務改善を検討する社内プロジェクト「SHINING活動」について、「女性だけでなく、全ての現場社員がよりよく働ける職場を目指す、現場の声を起点に改善を積み重ねていくボトムアップの運動だ」と説明した。
現場提案から生まれた改善例として、「自分に合った作業靴を選べる制度」や「冷却ベストの導入」などを紹介。「困っていることがあるけど声にしづらいという空気を変えるためにも、現場に耳を傾けるSHINING活動を続けていきたい」と力を込めた。
NTTフィールドテクノ 富山設備部の太田愛理氏も、現場で働く立場から、「以前のユニフォームは汗染みが目立って気になっていたが、今の制服は改良されていて着やすくなった」とSHINING活動による改善効果を述べた。
また、大型の脚立を女性が1人で運ぶのは大変だったが、「軽量の脚立が導入されて、現場作業が格段に楽になった」との感想も口にする。一方で、3段梯子のような重い機材には対応できておらず、「まだまだ改善できる点はある」と現場の声を伝えた。
制度利用の面では、「所属部署では女性が1人なので見えづらい部分もあるが、体調不良時には制度を使えた」とし、後輩女性の利用も確認したことで「少しずつ浸透してきている」と実感。
異業種の奥村組との意見交換については、「自分たちの取り組みが他社の参考になると知れて、モチベーションにもなった。逆に、奥村組の話しから新たな気付きもあった」と語り、今後の継続的な情報共有に前向きな姿勢を示した。
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