活用が進み始めている現場に共通することは、機能の多さよりも、使いやすさと一貫性を重視していることです。例えば、関係者が同じデータを見ながら議論できること、専門部署だけで閉じずに現場担当者も扱えること、工程をまたいでデータが受け渡されることです。こうした業務設計ができている現場では、3Dデータの捉え方が「一部の技術者のための情報」から「現場全体の判断材料」へと変わっています。
近年は、クラウド環境での処理や共有、作業負荷を下げる自動化、関係者間の閲覧性向上などを通じて、これまでよりも扱いやすい3Dデータ活用の形も広がりつつあります。重要なのは、技術を導入することそのものではなく、「現場の業務フローの中で無理なく使われ続ける」ことです。
建設DXで成果を出している企業に共通することは、ツールの導入で終わらず、業務設計まで踏み込んでいる点です。現場で使えるレベルまで操作や運用をシンプルにし、特定の人材に依存しない体制をつくり、工程横断でデータをつなぐ。こうした設計があって初めて、デジタル技術は業務改善に結びつきます。
3Dデータ活用も同じです。高精度なデータを取得すること自体が目的ではなく、そのデータが現場で意思決定やコミュニケーション、確認業務にどう使われるかが重要です。DXの本質は、デジタルツールを入れることではなく、誰でも使える形で業務に組み込むことにあります。
これからの建設業界では、3Dデータはさらに重要な役割を担っていくことが予想されます。人手不足が続き、現場管理や維持管理の負荷が高まる中で、データを基盤にした業務運営への転換は避けて通れません。だからこそ必要なのは、「どのツールを使うか」という視点だけではなく、「現場でどう定着させるか」という視点です。
小さく始めて広げること、現場主導で運用できること、データを一過性の成果物ではなく資産として扱うこと。こうした考え方が、今後の建設DXには欠かせません。3Dデータは、単なる先端技術ではなく、現場の生産性と持続可能性を支える基盤になりつつあります。建設業界における次の論点は、導入の有無ではなく、どうすれば現場で使い続けられるかというフェーズに移っているのではないでしょうか。
宮谷 聡/Satoshi Miyatani
ローカスブルー 代表取締役社長。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻修了後、フランスISAE-SUPAEROへ進学。東京大学総長賞受賞。フランスのAIRBUSにてエンジニアとして勤務後、シリコンバレーのAirware、イスラエルのAiroboticsなどの海外スタートアップで唯一の日本人として経験を積む。2019年10月に日本帰国後、ローカスブルーを創業し、土木建設業向け3Dデータ解析プラットフォーム「ScanX(スキャン・エックス)」を提供。2024年に東証プライム企業であるゼンリンにグループイン。
2021年東洋経済すごいベンチャー100選出。i-Construction大賞「国土交通大臣賞」受賞。2022年Forbes Japan Rising Star Award受賞。
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