点群データを設計・維持管理で“使える3Dモデル”に アイサンテクノロジーの新提案第8回 国際 建設・測量展

アイサンテクノロジーは「CSPI2026」で、点群処理と測量CAD機能を統合した平面図作成システム「ANIST」と、点群や平面図から現況3Dモデルを作成する2026年9月発売の新製品「ANIST-Modeler」を出品。単なるデータ取得にとどまらず、測量成果を計画・設計・維持管理へつなぐ一連のワークフローを提案した。

» 2026年07月29日 15時44分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 アイサンテクノロジーは「第8回 国際 建設・測量展(CSPI2026)」(会期:2026年6月17〜20日、幕張メッセ)で、「Survey to Create『測るから創るテクノロジーへ』」をテーマに、測量成果の作成から3Dモデル化、その後の設計・施工・維持管理での活用までを支援するソリューションを紹介した。

アイサンテクノロジーの展示ブース アイサンテクノロジーの展示ブース 写真は全て筆者撮影

点群確認から測量図面の仕上げまでをワンアプリで完結

 アイサンテクノロジーは、測量・土木分野を中心とするソフトウェアやシステムの開発ベンダーだ。代表的な製品が、2024年7月に発売した平面図作成CADシステム「ANIST(アニスト)」だ。

平面図作成CADシステム「ANIST」の紹介パネル 平面図作成CADシステム「ANIST」の紹介パネル

 ANISTの最大の特徴は、点群データの処理と測量CADによる作図を1つのアプリケーションで完結できる点にある。

 従来、点群から平面図を作成する際には、点群処理ソフトとCADソフトを使い分ける必要があった。アイサンテクノロジーの製品でいえば、大規模3D点群編集ツール「WingEarth」で点群を処理し、そのデータを測量CADシステム「Wingneo INFINITY」に受け渡して図面を仕上げるまでの工程を踏む。

 しかし、その方法ではソフトウェア間でデータを受け渡したり、ファイル形式を変換したりする手間が発生してしまう。また、点群処理ソフトで形状を確認し、別のCADソフトで作図するため、両ソフトを行き来しながら作業する煩雑さもあった。点群から読み取った地形や構造物の形状を頭の中で再現しながら線を描くことになり、作図者の負担となっていた。

 そこで開発したのがANISTだ。点群描画機能と測量CAD機能を1つのアプリケーションに統合し、作業の分断を解消した。点群を確認しながら、その空間上に作図し、作図結果をその場で確認できる。

右側に点群データ、左側に2D図面を表示したANISTの画面 右側に点群データ、左側に2D図面を表示したANISTの画面

独自の「ボールド点群テクノロジー」で形状を見やすく

 ANISTの作図作業を支える独自技術が、特許出願中の「ボールド点群テクノロジー」だ。点群の各点をドットではなく球体として描画し、その膨張や収縮、陰影によって、点同士のつながりや段差、構造物の境界を視覚的に捉えやすくする。

 一般的なドット表示では、点の密度が低い箇所や点と点の間に隙間がある箇所は、地形や構造物の形状を判別しにくい。各点を球体として面的に表示することで、点群が何を表しているのかが直感的に把握しやすくなり、トレース作業の効率化や図面品質の均一化にもつながる。

 担当者は「点群データを取得しても、描きたい位置に点がなく、その周囲にだけ点が取得されている場合もある。ただし、一つ一つの点の位置は正しいため、点を球体として拡張表示すれば、形状そのものを理解しやすい」と説明した。

一般的なドット表示による点群。点と点の間に隙間が見える 一般的なドット表示による点群。点と点の間に隙間が見える
ボールド点群テクノロジーによる表示。各点を球体として拡張し、点群を面として捉えやすくしている ボールド点群テクノロジーによる表示。各点を球体として拡張し、点群を面として捉えやすくしている

 機能面では、地図記号や法面、路面表示など、測量図面に必要な専用CADコマンドを標準で搭載し、国土地理院の「公共測量標準図式」に沿った図面作成にも対応する。点群を任意の高さで切り出す断面カットや寸法ガイド、2画面編集など、作業効率を高める機能も備える。

寸法ガイドを利用し、点群上のマンホールを作図 寸法ガイドを利用し、点群上のマンホールを作図

 単に点群上に線を描くだけでなく、整飾を施し、測量成果として提出できる平面図まで仕上げられる点が、実務での評価につながっている。担当者は、発売から約2年で「好評を得ている」と手応えを語った。

点群を「使える3Dモデル」に変える「ANIST-Modeler」

 ANISTで培った点群処理と作図の技術を3Dモデルの作成へと発展させた新製品が、ANIST-Modelerだ。2026年9月中旬の発売を予定しており、ブース内の特設コーナーでは、動画によるデモンストレーションを交えて機能を紹介した。

特設コーナーでの「ANIST-Modeler」のプレゼンテーション。動画を交え、製品の狙いや機能を紹介 特設コーナーでの「ANIST-Modeler」のプレゼンテーション。動画を交え、製品の狙いや機能を紹介

 近年は、SLAM技術を搭載した計測機器やレーザースキャナー、UAVなどの普及により、大量の点群データを比較的容易に取得できるようになった。一方で、取得した点群を設計や説明、シミュレーション、維持管理などに、どう活用するかが新たな課題となっている。

 点群は現実空間を高精度に記録できる一方、点の集合のままでは、道路、建物、法面、護岸といった構造物の区分や形状を後工程で扱いにくい。見え方や解釈が作業者によって異なることもあり、そのままでは使える用途が限られる。点群は自体は取得できても、その後の設計や説明、シミュレーションへの展開は容易ではない。さらに扱う人やソフトによって道路や建物、法面などの認識が異なり、成果物にばらつきが生じる点も、現場の悩みとなっていた。

 ANIST-Modelerは、点群や測量図面を参照しながら、道路、側溝、標識、建物、法面などを3Dモデルとして作成する。開発の狙いについて担当者は、「点群は現実空間を高精度に記録できるが、そのままでは業務での活用に限界がある。構造物を認識し、意味付けをして3Dモデル化することで、初めて使えるデータになる」と強調した。

ANIST-Modelerの主な機能。点群データを参照しながら、側溝やポール、標識、防護柵などの3Dモデルを専用コマンドで作成できる ANIST-Modelerの主な機能。点群データを参照しながら、側溝やポール、標識、防護柵などの3Dモデルを専用コマンドで作成できる

 3Dモデルの作成方法として、点群を参照した個別構造物の作成、ANISTの平面図からの自動モデル生成、数値地形図データを活用した広域モデルの作成などがある。会場では、側溝や道路縁、ポール、道路標識、壁や防護柵などを点群から3Dモデル化する操作を解説した。

 一例として側溝では、用意された複数の断面形状から現況に合うものを選び、点群上で始点や通過位置を指定することで、線形に沿った連続モデルを作成する。道路縁についても、点群上の形状に沿って作図した線を基に、3Dモデルを生成できることを示した。

点群を参照しながら、壁や防護柵の3Dモデルを作成するANIST-Modelerの画面 点群を参照しながら、壁や防護柵の3Dモデルを作成するANIST-Modelerの画面

 作成した3Dモデルは、面の分割や押し出し、拡大や縮小などによって形状を調整できる。道路標識などの面に写真を貼り付けるテクスチャー機能も備え、現況を分かりやすく表現できる。

 ANISTの平面図を活用した自動モデル生成では、図面データを読み込み、対象範囲を指定すると、図面上の線や記号、点群が持つ高さ情報などを基に、3Dモデルの初期形状を生成する。その後、作業者が高さや形状を調整し、現況に近いモデルへ仕上げていく。会場では、ガードレールなどの道路附属物や建物、路面が短時間で立体化されるまでを披露した。

ANISTで作成した平面図データを活用した3Dモデル作成の流れ ANISTで作成した平面図データを活用した3Dモデル作成の流れ

 点群に加え、DMデータ(数値地形図データ)を活用し、広い範囲の地形や構造物を概略モデルとして一括生成する機能も備える。その場合は、生成後に必要な箇所を手作業で修正し、モデルを仕上げる必要がある。できあがった概略モデルは、道路や橋梁(きょうりょう)、護岸、法面といったインフラ構造物の計画・維持管理、建物の設計・改修、公共施設や外構の景観検討などへの活用が見込まれる。

ANIST-Modelerが提供する主な価値 ANIST-Modelerが提供する主な価値

 担当者は「測量業務で3Dモデリングする例はまだ多くないが、今後は需要が必ず増えていく。点群を3Dモデル化することで、後工程でも使いやすくなる。その一歩先を目指した製品だ」と自信を示した。

 ANISTで点群から平面図を作成し、ANIST-Modelerで現況3Dモデルへと発展させる。アイサンテクノロジーは、測量で得たデータを設計や計画、維持管理へつなげる一連のワークフローによって、展示テーマに掲げた「測るから創るテクノロジーへ」を具体化する提案をしていた。

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