SGNISの開発背景には三菱地所との協業があった。設備統合ネットワークは2017年のPoC(概念実証)を経て、2018年から大丸有エリア(大手町、丸の内、有楽町)のオフィスビル群で導入を進め、2019年にサービスインした。
ネットワークソリューション部 部長 飯島良基氏は、「ポイントはビル1棟単体ではなく、大丸有エリア全体での採用にある。導入時には、既存資産を生かしたシステム設計を採用。実は、導入対象となった多くのビルには敷設したものの未利用の光ファイバーが存在していた。活用することで新設するコストを抑え、複数ビルをまたいだ統合ネットワークを構築した」と解説する。
ビル間の統合ネットワークは、三菱地所内では「ENDI(エンジ:Eco Network to Deliver Information)」の名称で、2021年から運用を開始した次世代監視カメラネットワーク「Acane(アカネ:Advanced Camera Network)」とも連携している。2022年9月の大規模総合防災訓練では、Acaneでエリア全体の状況を映像で収集/共有し、“面で捉えるBCP”を実現したという。ちなみに、Acaneのシステム構築にもパナソニックEWネットワークスが参画している。
三菱地所がパートナーに選んだ理由は、ビル内には数多くの産業用システムが稼働しているため、そのネットワークの知識があり、コストやサポート体制の信頼性に加え、画像解析で豊富な実績があったため、稼働中のビルに新技術を導入できる会社として白羽の矢が立った。
現在、複合ネットワークには駐車場の管理システムなどを含め、約20の設備システムが接続され、効率的かつ安全な管理運用の体制が整っている。
飯島氏は「こうした三菱地所との協業の中で、課題感や今後のビジョンを聞き、他の顧客も同じではないかと考えたのが、SGNISを外販するきっかけとなった」と振り返る。
SGNISが目指すのは、単なるビルのネットワーク統合にとどまらない。飯島氏は「目指すのは“建物OS”との連携による新たな価値創出だ」と語る。パナソニック エレクトリックワークス社もビルOS「Facibble(ファシブル)」を提供しているが、ゼネコンや他社デベロッパーが開発する建物OSとも接続可能な設計だ。こうした柔軟性が、業界全体の標準化や相互運用性の確保に寄与すると期待される。
当然ながら、ゆくゆくはAI活用によって監視や運用を一層省力化しつつ、セキュリティを強化する構想もある。ビル設備から得られる膨大なデータは、解析することでエネルギーの効率的利用や設備の予知保全にも役立つ。
SGNISは、三菱地所以外にもパナソニックの自社工場や博覧会場などでの導入が進んでいる。一例として、大阪・関西万博のパナソニックパビリオンでは、セキュリティ監視に利用されている。
設備統合による効率化と、SOCによるセキュリティ強化の両輪を兼ね備えているため、スマートビルやスマートシティーの基盤を支える存在となり得る。建設/不動産デベロッパーにとっても、SGNISはビルの付加価値を高める切り札となるだろう。都市の持続可能性と安全性を両立させるために、パナソニックEWネットワークスの挑戦はこれからも続いていく。
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