データセンター事業で売上2〜3割増、業界の人手不足にも対応 ジョンソンコントロールズ2025年事業戦略(1/2 ページ)

ジョンソンコントロールズは2025年の事業戦略について、建設ラッシュが続くデータセンターや、地方の大型製造施設などの高成長市場へ引き続き注力すると明らかにした。2024年の振り返りと2025年の事業戦略について、代表取締役社長 吉田浩氏が語った。

» 2025年01月31日 15時04分 公開
[黒岩裕子BUILT]

 ジョンソンコントロールズは2025年の事業戦略として、「高成長/高需要市場へフォーカス」「業界の人手不足対策」「脱炭素化の支援」の3点に注力する。

 高成長市場では、ハイパースケールデータセンターの増設やAIサーバの需要拡大が見込まれるデータセンター、半導体工場、EVバッテリー工場などの大型施設に焦点を当てる。また、建設業の人手不足問題に対応するため、自社の施工体制強化やデジタル技術を活用した業務効率向上を進めるとともに、サービスの提供を通じて顧客の生産性向上を支援する。脱炭素化に関しては、サステナビリティレポーティング支援やデータセンター向け高効率チラーの導入加速などを通じて貢献していく。

代表取締役社長 吉田浩氏 代表取締役社長 吉田浩氏 筆者撮影

データセンター事業は売上高が2〜3割増加、2025年も同程度の伸びと予測

 ジョンソンコントロールズは2024年、データセンターや大規模工場などの高需要市場に注力し、高い成長率を維持した。特にグローバルで需要が拡大しているデータセンター事業では2024年の売上高が前年比2〜3割増加し、2025年も同程度の伸びを見込んでいる。

 データセンターの旺盛な需要に対応するため、2023年10月に分野に特化した「データセンターソリューション事業部」を設立。東京や大阪、横浜の他、千葉の印西エリアにもオフィスを構えるなど、需要地に近い場所でのサービス提供体制を整備した。また、システムエンジニアリングや施工の組織も、データセンター向けに最適化を進めている。

 吉田氏は「データセンターではシステムの信頼性を確保するため二重化(冗長化)が不可欠だが、顧客ごとにニーズは異なる。当社は、コストと信頼性のバランスを考慮した最適な提案を行うことで顧客からの信頼を得ている」と説明する。

 さらに、データセンターのサーバルーム高温化にも対応する大型水冷式チラー「TORK YZシリーズ」の供給体制も整備し、順次納入を進めている。近年はデータセンター向けチラー市場は、従来の水冷チラーから空冷チラーに移行するユーザーが増加傾向にあるという。そうしたトレンドを踏まえ、ジョンソンコントロールズは2025年にグローバルで空冷チラーの発売を予定しており、日本市場向けには今後高圧ガス認定を取得して提供準備を進める。

 ジョンソンコントロールズの強みの1つが、強固なグローバルネットワークだ。吉田氏によると「当社の技術力は外資系データセンターに高く評価されている。グローバル展開する企業の日本進出時には、当社の米国本社から、早期に情報をキャッチできる。データーセンター企業の本社や日本法人といち早くコンタクトを取り、技術的なアドバイスを通じて、最終的には受注につなげていく。国内で施工やサービスの実績が多数あることも評価されている」と強調する。

施工の効率化も推進

 データセンター事業では、サービスレベルや技術レベルの向上に加え、施工の効率化も推進している。データセンターは一般的なビルと異なり、サーバルームを段階的に施工し、順次稼働を開始する。そこで重要になるのが協力会社との連携だ。吉田氏は「例えば10室あるサーバルームのうち、1〜3室目の施工で得た知見を協力会社にも共有することで、その後の施工に有効活用できる。協力会社に任せられる範囲を徐々に広げられるため、結果として当社の施工能力の拡大にもつながる」と説明する。

 また、エンジニアリングの標準化についても「冗長化のパターンを複数用意することで、顧客ニーズに柔軟に対応しながら、全体として効率化を図ることができる」(吉田氏)と言及。一般のビルでは難しい標準化をデータセンター事業で先行して進められることも、データセンター事業を独立させた理由の1つに挙げる。

 2024年12月には、茨城県坂東市に、データセンター向けのチラーを提供するHVAC(冷暖房空調機器)サービスセンターを開設した。大型チラー配送用トレーラーが2台同時に収容可能で、十分な作業スペースも用意し、空調機は約50台保管可能だ。ジョンソンコントロールズのチラーは輸入品だが、サービスセンターで交換用部品の在庫を確保することで、国内競合メーカーと同等のサービスを提供する。圏央道沿いにある印西、青梅、相模原などのデータセンター地帯の顧客向けにサービスレベルの向上を目指す。

坂東サービスセンターの開所式 坂東サービスセンターの開所式 出典:ジョンソンコントロールズプレスリリース

建物は大型化傾向 一般ビルは計画に遅れも

 工場は製造業の国内回帰や政府の補助金などが後押しし、2024年も投資が活発だった。緊急性が高く工期も短い傾向にあり、吉田氏は「2024年以上に伸びていく市場だと考えている」と語る。半導体工場、EVバッテリー工場などの大型施設は地方都市で需要拡大が予測される。これらの需要に対応するため、2025年は施設監視制御システム「BilWorks」など、産業施設向け自動制御システムの機能拡張や開発に注力する。

 一方、東京などの大都市圏では複合施設の再開発が活発だ。しかし、建設業の人手不足などを背景に、データセンターや工場など産業施設の整備が優先され、一般ビルは工期延長や着工延期の動きがみられる。ジョンソンコントロールズでも2024年は、売り上げベースでの垂直市場ごとの比率に同様の変化があり、売り上げの見通しや人員配置に柔軟性が求められた。

 吉田氏は「建設業では人件費の高騰に加え、円安の影響などによる材料費/機器の高止まりも一部で続いており、顧客の予算に合わない事例も増えつつある。特に複合施設を中心に開発計画の遅れ、延期も増えてきた」と解説した。

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