ジョンソンコントロールズが推進するオフショアリング戦略が、エンジニアの働き方改革や生産性向上に成果を挙げている。今後、データセンター向け制御事業にもオフショアリングを拡大するため、インドから2人のエンジニアが来日。来日の目的やオフショアリング成功の秘訣について、日本法人の担当者に聞いた。
ジョンソンコントロールズは、労働生産性とサービスレベル向上を目的に、社内組織インド グローバルコンプレックスエンジニアリング(GCE)へのオフショアリング(業務委託)を戦略的に推進している。2020年度(2019年10月〜2020年9月)からアプリケーションエンジニアリングの一部委託を開始し、日本国内のエンジニアの工数削減に加え、業務の効率化と質の向上を両立させている。
成果拡大のため、2024年10〜12月にGCEから2人のエンジニアが来日。オフショアリング戦略の展望や成功の秘訣について、日本法人でGCEと日本支社の業務調整を統括するオペレーション推進本部 オフショアリンググループ グループマネジャーのアリカデェ・シダルタ氏に聞いた。
GCEはジョンソンコントロールズインターナショナル(JCI)の社内組織として2000年に設立した(設立当時の名称はセンターオブエクセレンス(CoE))。現在は約730人のエンジニアが在籍し、世界各地のジョンソンコントロールズの拠点に、ビルディングオートメーションシステム(BAS)、冷暖房空調機器(HVAC)、防火/防災、セキュリティ、デジタルソリューションなど、幅広い分野のエンジニアリングサポートを提供している。今回来日したのは、GCEのシニア・アプリケーションエンジニア カルティック・S 氏、アプリケーションエンジニアのマンディープ・M氏の2人だ。
国内データセンター市場は急拡大が予測される一方で、建設業界や冷却技術を支える業界は深刻な人手不足に直面している。そこで、ジョンソンコントロールズでは、データセンターの冷却制御アプリケーション開発にもオフショアリングを拡大することとした。
具体的には、BAS「Metasys(メタシス)」のデータベース作成業務の委託範囲を拡大。データセンターなど冗長化が必要な施設で空調設備の効率的な制御で使用されているPLC(プログラマブル ロジック コントローラー)でも、ソフトウェアの作成委託を決定した。今回、訪日した目的は、オフショアリング拡大に向けたナレッジシェアリングと技術トレーニングだ。
彼らの受け入れを担当したのが、自身もアプリケーションエンジニアとしてキャリアをスタートしたインド出身のシダルタ氏。シダルタ氏は「GCEのエンジニアは既に高いスキルを持っているため技術的な課題は少ない。期待しているのは、日本固有の業務プロセスを学んでもらうことだ。日本の業務フローや作業プロセスに対する理解を深めてもらうことで、業務委託範囲の拡大と安定化につなげられると考えた」とそのねらいを語った。
一般的なBASの構築では、ユーザーの要望に応じたシステム設計を基に、プロジェクトマネジャーが自動制御の仕様を決定。その仕様に沿って、エンジニアが制御プログラムなどのアプリケーションを作成し、施設管理者向けの操作/監視用グラフィカルユーザーインタフェースや、システム全体を統括するデータベースを構築する。
ジョンソンコントロールズでは、アプリケーションエンジニアは主に3つのツールを使用してBASを構築する。システム全体の構成を設定する「SCT(System Configuration Tool)」、温度や湿度など空調機の制御設定を担う「CCT(Controller Configuration Tool)」、施設管理者が使用する操作画面を作成する「MUI(Metasys ユーザー インタフェース)グラフィックマネジャー」だ。
日本法人からGCEへのオフショアリングは2020年度に開始。当初はMUIグラフィックマネジャーを使用したダイレクトデジタルコントローラー(DDC/デジタル式制御機器)ソフトウェアや中央監視のグラフィック作成など、比較的単純な作業から委託を始めた。
この取り組みを足掛かりに、2021年度には設計や制御盤の図面(盤図)作成、データベース作成といった業務にも拡大。CCTツールを使った空調機器の制御設定プログラミングなどへも委託範囲を広げるなど、オフショアリングの範囲を着実に拡大してきた。
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